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「泣いたのは俺のせいかもしれないけど何もしてねーもん」
「いい加減にしとけよ。……理由を聞いてんだろうが」
「世間話的な?」
「てめぇ脳みそ引きずり出してやろうか。ああ!?」
天を仰ぎながら腕を組み、のらりくらりと的外れな答えばかりで、本気で腹がたつ。血が沸騰するんじゃないかと思うほどに、一気に体温が上がるような感覚に陥り、今度こそぶん殴ってやろうと掴みかかる。
「やめー!!」
……あ?
「もうやめー! ハルも高橋くんも!」
深夜というより朝方に近づいている時間に愛姫の叫び声が響き渡り、思わず体が止まってしまった。
ゆっくりと振り返れば、両手を握りしめて俺達を睨みつけていた。
「森下……?」
「うるせぇ……」
唖然としていると、つかつかと歩いてきて、俺の腕を思いっきり掴んで下ろさせられた。
「ハル! 高橋くんは悪くないって言ってるじゃない!」
「俺は理由を聞いているだけだ」
「だったらそんなことしちゃ駄目! ちゃんとお話聞いてって言ってるのに!」
「は、怒られてんの。ざまーみろ」
「高橋くんも! どうしてさっきからそんな言い方してるの!?」
「あ、いや、これは……」
二人の間に割り込み両手を腰に当てた愛姫が、渇いたはずの涙を溜めて頬を膨らませている。
「俺に指図すんな」
「だって!」
人間そんなに一気に水分を出せるもんかというぐらい、涙と鼻水流して睨みつける。そんなもんじゃ迫力も何もねぇけどな。
「森下、あの……ごめん。別に泣かすつもりじゃ……」
「触んな」
涙を拭おうとした高橋が伸ばした腕を払いのけ、愛姫の手をとり引寄せた。
「泣くな」
袖でごしごしと目元を擦り、胸に顔を埋めさせると、鼻をずるずるいわせながら、両手を腰にまわしてぎゅっと力を入れられた。
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