08 すぐ側にあるベンチにみどりを座らせて、倒れてしまわないように頭を傾かせ、自分の肩に乗せる。 「……酒弱いくせに飲むんだよな、こいつ」 そう言って目を細めた高橋くんの顔を見て、思わず胸の奥が熱くなった。あまりにも切ない表情をしたから。 「……どうして言わないの?」 「何を?」 「え、だってみどりのこと……」 高校生の頃からずっと好きなのに。 「……何でバレてる……」 明らかにみどりを見る目が違うから。あたしにだってそれぐらいは分かるよ。その気持ちを口にしなくても、目が好きだって言ってる。 そんなことを伝えると彼は、ジト、とこっちを見た。 「お前にバレてるなんて終わってんな」 「……それはあたしに失礼だと思うのは気のせい?」 「だーって森下以上に鈍い奴なんてこの世にいないし」 「何だよー! そんなあたしにバレバレだったくせにー!」 お腹に軽くパンチを入れると、そこを抑えて冗談だと笑った。 「本当にな」 「……?」 「何で気づかねぇかな、こいつは」 「それは……言わなくちゃ伝わらないことだって……あるから」 静かに寝息をたてるみどりの頬をつまみながら、そうだなと頷く彼は苦しそうに見えた。 ……伝えたくても、そうできない辛さをあたしは知ってる。理由は違うけど、あの頃のあたしと同じように、どうにもできない想いを抱えてるんだろうと思うと、何故だか鼻の奥がツンと痛くて熱くて、気がつけば涙が出ていた。 「ちょ、何泣いてんだよ」 「だって……うあー…」 「マジでどうした! おい、ちょっと森下」 慌てたようにあたしの前に来て、涙を止めることができない目元を袖でごしごしと擦る。 「あー……彼氏に怒られたことでも思い出しちゃったか?」 「違うー! だって高橋くんがー……」 「な、何だよ」 「苦しいの……分かるもん……」 あたしが泣いたところで、困らせてしまうだけだと分かってるけど止まらない。 なんとか泣きやもうと努力していると…… *←→# |