05 「俺とつき合え」 「……え……?」 「責任とれよ」 さっき緩んだ表情は、音をたてるように呆気なく沈み、みるみる涙ぐんでいく。 「……責任……?」 「そ。この俺を惚れさせたお前が悪いんだから、責任持って俺とつき合え」 自分勝手な要求だと分かってはいる。そして今のこの状況は、コイツを困らせているだけだということも。 普通は上司が部下に言っていいことじゃねぇんだろうな。分かってはいるが、一度吐き出してしまった気持ちは抑えがきかない。 「お前に責任をとらせる代わりに約束してやるよ」 「でも、あの、それはあの……」 それは不安からか驚いているからか、戸惑いの声だけが聞こえる。 「絶対に俺のことを好きだと言わせてみせる。俺と出会って良かったって思わせてやるよ」 もちろんその自信があるからの言葉で、本当に約束もできる。 ◆ 黙って待つこと5分ってとこか。これ以上に追い込んでみたところで無駄だろう。 逃がすつもりはねぇが、考える猶予を与えてみようかと思い始めていた時…… 恨めしそうに、怯えるように涙ぐみながらも、コクンと頷いた。 ……これは…… 「……おい」 「は……い……」 もしかして 「今のは…… つき合うってことなのか……?」 「……はい」 「もう一回聞くぞ。俺とつき合うのか?」 ゆっくりと首を下に向け、もう一度頷いてくれた。 マジか…… いや、物凄ぇ嬉しいんだが。なんつーか、人間あんまり嬉しいと言葉にならないもんだな。 ふと目をやると、頬を真っ赤に染め、目をキョロキョロとさせながら、どうしていいのか分からないというような森下が見えた。 やべ…… 可愛すぎんだろうがアホ女。 *←→# |