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14


捕らえられていた手を引っ張られ、離されたハルの左手があたしの後頭部を強く押して、唇が触れたと思う暇もなく舌が差し込まれ、空気を取り込むことさえも許してくれない。
がっくりと折れてしまった膝と砕けた腰のせいで、滑り落ちてしまう体も幾度となく引き上げられ、どれほどの時間が経ったのかも分からかった。
白くどこまでも広がった頭の中、本当に、本当に気を失ってしまうと感じた時、ようやく唇は離れた。

宙ぶらりんの意識のままで抱きかかえられ、どこかに運ばれているとぼんやりと考える。と、落下する感覚が襲ってきたと思ったら、体が跳ね上がった。
あたしは酸素を吸い込むことに必死になっていて、ベッドの上に落とされたんだと認識するまでは、時間がかかってしまった。

「苦しそうだな」

聞こえた声の方に視線を向けると、立ったまま、にこりともせずに冷たい目で見下ろすハルがいた。

「……は……る……?」

呆然としたまま怖くなって名前を呼んだ。
え……何……? こんな目で見られたのは初めてだ。

感情がない目でこっちを見たまま近づいてきたハルが怖くて、思わず後ろに下がった。
ベッドに乗ってあたしの前まで来た時、ハルの右手が振り上げられた。
……嘘! 殴られる!

信じられない思いでぎゅっと目を閉じる。

「……へ? あ、の……?」

伸びてきたハルの指に、鼻をつままれていた。

「ざまみろ馬鹿女」
「え?」
「おいこら、誰が可愛いって?」
「……ハル?」
「さっきのお前すごかったな。顔は面白いほど真っ赤で心臓はうるせぇし、途中から体はやけに熱くなるし」

心の底から思う。こんな仕打ちがあるの?
あたしは心臓がまだばくばくして苦しいのに!

「お前の方が熱でも出してんじゃねぇかと思った。愛姫、お前、マジで死ぬかと思うほどにどきどきできたろ」

まるで嘲笑うかのように意地悪な目をして唇を歪ませているハルが、あたしの鼻から手を引いた。……信じられない!

「ひ! ひどい! 何で? 意地悪! ハルの馬鹿!」

悔しいのか悲しいのか、それともあんまり驚かされたせい? 理由なんて分からないけど、吹き出してくる汗や涙。それらを止める努力もせずに、あたしは思いっきり泣き喚いた。




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あきゅろす。
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