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いいな、忘れろよ。念を押すようにもう一度そう言ったハルが、シャワーを浴びてくると寝室から出ていった。
不機嫌な顔をしてあたしからは目を背けたままだったけど、何かちょっと違う……?
ハルのあの感じって……怒っているのかもしれないけれど、でも、もしかしたら……

お風呂から15分も経たないうちに出てきたハルは、タオルを首にかけ、髪の毛からは水滴を落としていた。あろうことか上半身は裸のままだ。

「ハル!」
「あー分かってる。ちゃんと着るし髪も乾かすって。頼むから騒ぐな」

のんびりした動きで冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、一気に飲み干した。
火照った顔は熱いシャワーのせいだけじゃない。まだ熱があるせいでもある。

急いで取ってきた着替えをハルに渡すと、面倒そうに袖を通してくれた。
立ち上がるのも億劫そうにゆっくり動くハルを見て、シャワーなんて無理にでも止めれば良かったと後悔した。
ドライヤーをかけてあげたかったけど、自分でやると睨まれてしまったので、ちょっとでも食べてほしくて、つくりかけていたお粥を完成させる為にキッチンへ向かう。

ぐつぐつ煮立っている小さな土鍋の中を確認していたら、後ろから急に腕が出てきてびっくりした。

「あんまり食欲ねぇけどな」

お風呂上がりの香りとまだ熱いハルの体温が、柔らかく首筋から漂う。

「あ、えっと……ハル、今は、ひ、火を使ってるから……」
「だから力は入れてない」
「でも……! あ、あぶ、危ない、よ……」

どきどきするまま何とかそう訴えると、あたしの肩にあったハルの片腕が動いて、右手が土鍋の蓋を開けた。

「上出来」

中を覗いてそう言うと、コンロのスイッチをピッと押して電源を落とした。

「え?」

今度はその手があたしの頬を下から押し、上に顔を向けさせられた。
……! 待っていたのは真上から見下ろしているハルの顔だ。

「愛姫」
「う、あ、……はい!」
「……好きだ」

え、な……に、これ……
体中がいっせいに悲鳴を上げ、思わず叫んじゃいそうになった。
だってこんなタイミングで、そんな真剣な顔で、そんな目をして、いきなりそんなことを言われたら、どうすればいいのか分からない。




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あきゅろす。
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