[携帯モード] [URL送信]
08


暴れる心臓の音がハルに聞こえないことを祈りながら、話すことも動くこともできずになんとか耐えていたけれど、抱かれているハルの腕から急に力が抜けた。
ゆっくり目を開けてみると、ハルは今度こそ、やっと深い眠りに落ちたようだった。
そっとお布団から出て、ようやくハルの額の汗を拭くことができた時にもまだ、あたしの胸はどきどきしていた。

ハルのことを子供のようだと思ったのは、今日が初めてのことだ。まるで寂しくて手を伸ばしてくる子供のようだ、と思った。
病気の時には心細くなるものだけど、まさかハルがあんなことを言うなんて思わなかったから、何かちょっと変というか……不思議な感じで。
さっきのあれはもしかして、甘えていたのだろうか……?

そう考えると、今度は胸が苦しくなった。ぎゅっと締め付けられるように苦しい。
普通の状態じゃないからだとしても、少しでも自分が頼りにされたかもしれないことが素直に嬉しい。嬉しくて、目の前にいる恋人が愛しい。……抱きしめたくなった。

ハルが倒れたなんて、すごく不安なのに。なのに嬉しさや愛しさが、どんどん溢れてくる。その上、苦しむハルを可愛いと思ってしまった。
いろんな感情が体中に渦巻いている自分が、怖くなった。……こんな時に喜ぶ自分がいるってことが怖い。

シャワーを浴びて歯磨きをして、頭の中をすっきりしたつもりでハルの所に戻った。
何とか服を脱がせてもう一度汗を拭き、冷却シートを張り替えると、急に眠気に襲われた。
ちゃんとハルを見ていないといけないのに、瞼が下りてくる。
ベッドの脇に座ってハルの手を握った。
ちゃんと起きてお世話しなくちゃ。また熱が上がってしまうかもしれないから。だから、あたしがちゃんと見ておかなくちゃ……

―――あたしは最低だ。
気がついた時にはお外はとっくに明るくなっていた。あのまま寝ちゃったんだ!

「よぉ」
「ハル!」
「よく寝てたな」
「き、気分はどう? 頭痛くない? お熱は?」
「悪くない。頭痛も熱もない」
「本当?」
「ああ、お前を床から抱き上げるぐらいには体力もある」

ああ……やっぱりあたしは最低だ。床に座ったまま寝ちゃって、そんなことをさせちゃうなんて……! 最低!




*←→#

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!