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03


「愛姫ちゃん開けてー」
「お、お疲れさまです! ハルならまだ……」
「知ってる。とりあえず開けてくれない?」
「でもハル以外の人は開けちゃ駄目だって……」
「あーうん、けど今は緊急事態だから。見えるかな? これ」
「え? あっ!」
「ね? 開けてくれる?」

すぐにオートロックを開けて、玄関から飛び出した。そのままエレベーターの前まで走ったけど、入れ違いになると困るので、上がってくるのを待った。

「愛姫ちゃん、お疲れー」

到着したエレベーターの中から現れた田中さんが、あたしの顔を見てにっこり笑った。額には汗をかいている。
肩を組むようにした腕と、腰を支え、だらんと首が下がったハルを連れていた。

「ハル!」
「あー、ごめん。事情はあとで話すからさ、俺もう限界なの。先に中に入っていいかな」
「あ、ごめんなさい!」

急いで部屋に戻ってドアを開けると、不安定に少しよろめきながら入ってきた。

「愛姫ちゃんごめん、頼んでいい?」
「はい!」
「違う違う、こっち。靴、脱がしてもらっていい?」
「あ、はい!」

一緒にハルを支えようと手を伸ばしたあたしに、愛姫ちゃんには無理だ、と苦笑しながら言って、片足を上げた。
交互に上がった田中さんの足から靴を抜き、ハルの方は持ち上げてから何とか脱がすことができた。

「あー! マジ参った! 重いっつうの!」

ベッドにドサッとハルを落とし、田中さんが床にへなへなと座り込んだ。
少し荒く呼吸をしているハルの顔は赤く、汗が滲んでいた。……熱がある。
よっ、と田中さんが起き上がり、ハルの体を仰向けに寝かせてくれた。

「愛姫ちゃん、タオル濡らして持ってきてくれる?」

大急ぎで用意をしてから寝室に戻ると、服を脱がされて、ハルの上半身が裸になっていた。

「ここからは愛姫ちゃんの仕事かな。汗かいてるからそれで拭いてあげるといい」

さすがにそこまで俺がやるのは気持ち悪い、と言って笑った田中さんが、今度は床に倒れ込んだ。

「あー疲れた……あー重かった……」

溜め息混じりにそう言った田中さんの声が背後から聞こえていたけれど、ハルの方を優先させてもらった。
ぐっしょり濡れている汗を拭きとっていると、ハルの瞼が薄く開いた。




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