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02


いっぱいやりたいことはあるけれど、やれることもなくなってしまったので、ココアを飲みながら、ハルを待つことにした。
ココアはすでにお砂糖と少量のお湯で溶かれたものが、これもまた冷蔵庫にあって、ミルクを加えて温めるだけで美味しく飲める。
ハルがあたしの為に用意してくれているものだ。自分は絶対に飲まないのに、絶対になくなることがない。少なくなっても、次に見た時には、また元の量に戻っている。
ハルがいつそれをつくってくれているのか、全然分からない。

……ミートソースもデザートのプリンも、このココアだってそうだ。全部あたしの為にハルが準備してくれてるんだ。お掃除もお片付けも、お休みの日以外はさせないようにしてくれている。
少し前まではそうでもなかったんだけど、あたしが張り切りすぎて疲れてしまった時があって、それからは、お仕事がある平日には、ほとんど何もやらせてもらえなくなってしまった。

だけどそれも、ハルの素敵なところ。
温まったココアをマグカップに入れて、リビングのソファに座って、飲みながら思った。
だって、底についてる棒をぷちんってやって、プリンをお皿に出してるなんて、そんなこと想像もできない。自分の為にはやらないことをあたしの為にやってくれてるなんて、申し訳ない気持ちと感謝の気持ちが溢れてくる。

「あーっ!」

DVDを見ようとデッキをあさっていると、そこには今までなかったものが、新しく並べられている。
何年も前にDVDになっていて、見たい見たいと思っていて、なのに思ったままでかなりの期間が過ぎ去っていた。
興味がないと分かってるハルには内緒にしてたのに、何で……?
さっそくDVDをセットして再生ボタンを押した。

ハルは不思議な人で、どうしてかあたしが嬉しく思うことを知っている。
嬉しいな、嬉しいな。早くありがとうって言いたいな。早く帰って来ないかな。

たった二時間弱の時間の中に閉じ込められた、壮大なファンタジーを見終えて、ほうっと息を吐き出した。と、その時、チャイムの音がした。
やっと帰ってきた! と、嬉しくなってモニターを確認する為に走ったけれど、そんなわけないと思い直して足を止めた。
ハルは自分の鍵で帰ってくるから、呼び出しのボタンを押したりしないもん。
ん、じゃあ誰……? あ、でも出ちゃ駄目だって言われてるんだった。

どうするかを考える間にも、チャイムは何度も鳴り響く。それをずっと無視しているのは落ち着かず、ハルの言いつけを破って、モニターを覗いた。

「あれ? あっ!」

よく知った顔が困り果てた表情で映っている。
……田中さんだ!




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