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「ちょっと痩せたんじゃねぇのか、お前」

という俺の問いかけに愛姫の顔色が変わった。そんなの知らない。と、こいつにしては貴重だとも言えるぐらい、素っ気ない言い方で返事をし、ふいっと顔を逸らした。

「まともに食わねぇからやつれてんだ、馬鹿」
「や……! 痩せたんならいいでしょ……別に!」

自分の体型を気にする愛姫は、人からの指摘がとにかく嫌なのだ。増減どちらのことも、俺が口にすれば、どんなに笑っている時であれ、すぐに機嫌を損なう。
何度かそれで失敗したことがあるが、それを踏まえたうえで言わずにいられなかった俺の気持ちってやつも、お前は少しは考えろ。

良いわけねぇだろう。と逸らした顔を無理矢理こっちに向けさせた。
それでも反抗的な視線を向けたので、右手で両頬を掴んでいっぱいに詰められた空気を抜く。
そのまま口付けて、唇の横についたヨーグルトも舐めとってやった。
離れた途端、もう! と睨んできたものの、もう一度、今度は口内に舌を差し込んで掻き回すと、さすがに大人しくなった。

「お前が痩せようが太ろうが文句は言わねぇけどな、もう少しだけでも自分の体調には気を使ってくれ」
「あ……」
「頼むから」
「……ごめんなさい」

唇の端にあった透明な液体を親指で拭ってから、思いきり息を吸い込んだ。

「……だいたいな! 俺は鍵をかけろって言っただけだろうが! アホか! そんな理由でどんだけ追い込まれてんだ! 誰だってミスぐらいするんだよ! 仕事でもプライベートでも完璧にやってみせようとはするな! いいか! 同じことを繰り返して体重が減ったと喜ぶようなことをもう一度でも口走ってみろ! 次は本当にぶん殴るぞ!」

大声でまくし立てると、愛姫の伏せていた目が見開いた。喉が動き、ごくりと音を出し、息と共に声も飲み込んだようだ。
やっぱり溜め込むのは良くねぇよな。最後に一気に吐き出して、俺の気分はかなり良くなった。
ああ、そりゃあすっきり爽快だ。

「心配かけてごめんなさい……」

しばらく呆然としたあと口にしたのは、小さな涙声の謝罪だった。
愛姫の前に立ち、ぎろりと睨んでやって頭に手を乗せた。そのままがっしりと掴んで上を向かせる。




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