[携帯モード] [URL送信]
16


会議が終わった時には、もうすでに23時を過ぎていた。ぞろりと出て行く奴らを見送り、一人になって、大きく息を吐いた。

電源を落としておかなかった自分のミスだが、相変わらずポケットからの主張はうるさかった。まだぶるぶると震えている。
やっと取り出し確認すると、メールと電話の両方が、何十件も履歴に残っていた。
最新のメールは愛姫からで、やっと起きたとのことだ。遅くなっても待ってると続いている。
それだけ寝れたら目の下に飼っていたくまも、消えているかもしれねぇ。と、安堵した。
残りの着信は、部下の一人だ。会議中だと知っているくせに、とことん頭が悪いらしい。それとも、置いてきたはずのアルコールにまみれたハゲが、いよいよ死んだか。

足早に戻ると、電話相手に頭を下げている社員達の姿が目に飛び込んできた。……いったい誰が何をミスれば、部署全体が、こんな時間になってまでこんなことになるのか。
上司としては、一刻も早く状況の確認と指示を出すのが当然なんだろうが、由々しき事態だ。フォローをしようという気がおきねぇ。……念願の無責任さが、ようやく俺にも備わったのかもしれなかった。
今さらっつうか、今この時に。これは参った。
いい加減に俺にも疲労がたまっているのか、どうでもいいとさえ思っている自分に少しばかり驚いた。

しかしまあ、よくも次から次へと面倒事が降ってくるものだな。
だから言ったんだ。嫌な予感というものは、妙に的中率が高く、しかもタチが悪けりゃ始末も悪い。

室内に踏み込む気が失せてその足を止めたまま、壁に寄りかかって他人事のような気分で眺めていた。
そんな俺を目ざとく見つけた一人が、青ざめた顔で足早に近づいてきて、状況説明を必死こいて始めた。
仕事相手に郵送した書類が、別の会社に送るはずのものだったらしい。
ここまでくると、怒りを通り越して笑えてくる。




*←→#

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!