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14


15時になり休憩の為にコーヒーを持って喫煙室に入った。
相変わらず愛姫は電話に出ない。そのうえメールの返信すらないのは珍しいことではあるが、疲れに疲れ、疲れきっているこの状況で、しかも寝不足だ。まだ寝ていても不思議じゃない。
睡眠欲に勝つことを苦手としている愛姫が、たんまりと目の下にくまを従えていたのだから、すやすや夢の中にいてくれれば御の字だろう。
ただし、仕事のことも俺のことすら忘れて、あいつに本当に幸せな睡眠がもたらされていれば、の話だ。

自分のデスクに戻ってみれば、遅刻をして迷惑をかけたクソ主任が他の奴にいちいちちょっかいを出し邪魔をしていた。相手をしなければそのうち諦めて引くのだが、どいつもこいつも要領が悪く、反応するから調子に乗るのだ。主任相手に無視を決め込む度胸がねぇ新人をターゲットにしているせいで、仕事は遅々として進まねぇ。

「おい、そこのハゲ! とっとと仕事しろ! てめぇらもいちいちカス相手に反応すんな!」
「何だよ! 自分が引っ張り出されたからって八つ当たりするなよ! 俺はみんなで楽しく働きたいだけだ!」
「俺が引っ張り出されたのも仕事が滞ってんのも、酒に溺れたドカスのせいだろうが! これは以上の邪魔をするならてめぇは遅刻した分どころか今日は欠席扱いにしてただ働きだ!」

言いながら卓上に広がった書類の束を持ち、田中の所まで行った。

「仕事はみんなで仲良く楽しく元気よくが俺のモットーだ! それをお前の怒鳴り声が……え……? 何? ちょ! 待っ……ぐわっ!」
「死んどけ」

グダグダと文句を言う田中の脳天に向かって足を振り下ろしてやった。
加減はしたつもりだったがその場にがっくりと崩れ落ちた。……足が長ぇってのはなかなか便利なものだ。
紙束を足下に転がっている奴のデスクに投げ出して、周りを見回すと、他の奴らがいっせいにパソコンに視線を落とし、忙しなく指を動かし始めた。
静かになったのを見届けて自分の席に戻り、残った仕事を片付ける。
やろうと思えば仕事はいくらでもあるものだ。飯を食うのも後回しにしてやっていると、あっという間に会議の時間になっていた。




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