[携帯モード] [URL送信]
13


どんな内容であれ、トラブルが発生する時というのは、どういうわけか間が悪い。そしてそういう嫌な予感めいたものは、大概が的中するのだから、タチが悪けりゃ始末も悪い。
久しぶりの休日だというのに、いつまでも鳴る着信に起こされ、携帯を叩き割りたくなった。

「何の用だ」
『お休みのところ申し訳ありません!』
「そう思うならかけるんじゃねぇ」
『すみません! 至急確認してほしい書類があるのですが!』
「は……? 田中が出勤しているはずだが」
『いえ、来ていません。連絡も取れなくて……携帯の電源も入っていないし、家にかけても留守電に繋がるばかりで……』
「……間違いなく家にいる。行って叩き起こしてこい。どうせ鍵なら開いてる」

使いもんにならねぇ同期の部下と連絡がとれねぇのは、どうせ泥酔でもして寝こけているのだ。
どうせその塒は、入社した当時のまま、社員寮という名目のマンションだ。名刺と身分証を提示して理由を言えば、閉まっていたところで簡単に扉は開く。解決だ。
あとは放っときゃいいとは思うが、だからと言って、見て見ぬふりをしてもう一度眠ることができるとすれば、その元凶のハゲぐらいだろう。残念ながら、俺はその無責任さを持ち合わせてねぇのが辛いところだ。
本来なら会議が始まる夜に出社すれば良かったものを、まだ午前中にも関わらず、社内に体を滑り込ませることになってしまった。俺よりもあとに欠伸をしながら入ってきた二日酔いのカスには、当然ながら裏拳を見舞っておいた。
それから、眠っているのか電話に応じない愛姫に留守電とメールを入れ、行くのが遅くなることを伝え、契約書や企画書等の書類に目を通し、仕事を始めた。
今日この瞬間に関して言えば、全くもってやる気はないが。




*←→#

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!