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あれから半月以上もたったが、忙しい俺と愛姫のスケジュールが合わず、ろくにかまってやる暇もなかった。出張とまではいかねぇが、社外の仕事が多かった分、あいつの顔を見ることも極端に少なかった。今夜も例に漏れることなく午前様だ。
やる気は買うが、いい加減に力を抜け。と、何度となく電話で忠告していた愛姫は、頷くだけで聞く耳を持っていなかったようで、久しぶりにまともに見たあいつは、疲労の色が出ているどころの騒ぎじゃなかった。さすがに限界だ。

早めに出社した今朝、誰よりも早く愛姫がいることに驚いた。
デスクに突っ伏し、顔を腕にうずめている。近づいてみて眠り込んでいることに気づいたが、顔色が悪かった。起こしてみれば、目の下に隈までつくっていた。
今のこいつは言って聞くような素直さはねぇんだから仕方がねぇ。
そのまま担ぎ上げて車まで運び、家に連れ帰った。
文句ばかり言っていたが取り合わず、ベッドに押し込む。それでも仕事をするんだと騒いでいたが、数分とたたずに寝息をたてはじめ、完全に寝入ったのを確認してから会社に戻った。

ああクソッ、あいつは充分に睡眠時間はとっているはずだ。それでも足りてねぇってことは、それほど疲れているのだ。体はもちろん精神的にも疲労がある。頼むから無理をするなと言われずとも、自分の体調ぐらいはもっと気を使え。
おとなしく寝ていることと、早く帰れることを願っていたのだが気が散って仕事にならず、結局こんな時間にまでなってしまった。
とりあえず助かったのは、今日が金曜だと言うことだ。まあ……日付が変わり、すでに昨日なんだが。

愛姫のアパートまで車を走らせ、二階の部屋の窓を見上げ、電気が消えているのを確かめる。
予定では思いっきり説教してやるつもりだったんだがな。さっきの「助かった」ってのは、少々遅くなろうとも休日前夜なら、説教するぐらいの時間は割いてもいいだろうと考えていた。まあ、あくまで予定は予定、この状況で叩き起こすわけにもいかねぇ。
明日話があるから家にいろというメールを送り、シャワーを浴びた。




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