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06


愛姫の体は当人よろしく恐ろしく正直なうえ、経験の少なさが邪魔をして、そう耐性も持ち合わせてない。
そして散々怒られたこのタイミングでは、躊躇うのは当然だとも言える。

耐性云々は、俺も人のことは言えやしねぇが。
愛姫にこの状態で我慢させておくことは、多少の悪戯心と仕置きのつもりだった。しかし、ろくでもないことを他人にすると自分に跳ね返ってくるらしい。
灯った熱を全身から溢れ零す愛姫の姿は、かなりの破壊力だ。脳髄から足の先まで瞬く間に電気が走る。

所詮、散々してやった説教の最中も、同じ失敗を何度も繰り返すこの女の構造にいくら腹を立てている時でも、頭の片隅では何故か愛しさを拭いきれずにいる。俺に対する想いがあってのことだと分かっているせいなのか、自分が怒鳴りつけているくせに、泣き出す愛姫を抱きしめてやりたくなる。
とはいえそんなアホなこと、プライドに懸けて、死んでもしねぇけど。

「辛いだろ」
「……ッツ!」
「鎮めてやろうか」

真っ赤に染めて震わす体を抱き寄せ、そのまま押し倒した。舌先で唇を割り口内に侵入すると、その瞬間、愛姫が脱力した。
ふっと離れてその顔を見た時、今度は俺の中の劣情が一気に膨らみ弾けた。
寝室に運ぶまでの時間すら惜しいと思う。

可愛い吐息と泣き声を散々聞いた後、落ちて眠っている愛姫の汗を拭いて、自分も隣に並んだ。
頭を腕に乗せ抱き寄せる。閉じた瞼を縁取る睫の先に口づけて、抱く腕に軽く力を入れると、心地良く感じているのか顔がすり寄ってきた。
その柔らかい髪を弄びながら思う。少し意地の悪いことをしてやるつもりが、こっちの理性のストックが尽きた結果、愛姫には無理をさせてしまった。が、それでも俺には足りねぇ、と。

優しく抱くのは愛姫の為の行為だと言ったら、お前はどんなことを思うだろう。お前が壊れてしまう寸前にまで滅茶苦茶にしてやりたいと口に出せば、お前は怯えて泣くか?
俺の目の届く所だけに置いて、どんな危険からも遠ざけて、他の奴から見えねぇように閉じ込めていたいと、そう言ったら、お前はどんな顔をするんだろうな。

まあこれは極論だが、本音でもある。自分がこんなに執着心の強い人間だとは知らなかった。
自分でも知り得ねぇ俺の中にあるものが、次々に引きずり出される。
それは時にとてつもなく嫌になこともあるが、惚れた女を手に入れた代償がこれなら、諦めるしかねぇな。

聞こえる寝息に吸い込まれていく意識の中で、再認識する。
お前は馬鹿だが、すげぇ女だ。




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あきゅろす。
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