[携帯モード] [URL送信]
04


そういえば、3Dだから映画館で見たいと大騒ぎしていたのを思い出した。
今、そこで泣いている女がやけにしつこかったんだが、あれは何だ、制作者側の嫌がらせか? 映画に集中させたいくせに、あんなメガネをかけさせるとかあり得ねぇだろ。

「泣くほどいいもんだったか?」
「すごく良かった……もう一回見ていい?」
「勘弁しろよ。買ってやったんだからそれはお前のだ。帰ってから好きなだけ見ろ」

ずびっと鼻をすすり、うさぎのように赤くした目を擦る様子を見ていると、でかい色メガネをかけずに正解だったろうと言ってやりたくなった。
大して集中力もねぇくせにあんなもんつけてりゃ、泣けるほどは話に入り込めなかったはずだ。他はどうか知らねぇが、こいつの場合は。

抜群の温度で出してやったのに、すっかり忘れ去られていたものの存在をを思い出したようで、ごくごく一気に飲み干して、俺に笑顔を向けた。美味しいココアありがとう、と。……嘘をつくな、美味いわけがねぇ。

「愛姫」
「ひゃっ!」
「極甘だな」
「な、なっ! ハル! んんー!」

片手で頬を掴んで顔を上に向けさせ、口の周りに残った液体を舐めてやると、途端に耳から首筋まで赤味がさした。
前触れもなしの行動に文句でも言おうとしたんだろうが、かまわず舌を突っ込み、体の力が抜けてしまうまで掻き回してやった。チョコの嫌な甘さが口内に広がる。
途中で目を開けて愛姫を見てみると、目尻には水滴が押し出されていた。
しつこく舌を動かしていると、俺の服を掴んでいた腕が落ち、それを確認したところで解放してやると、そのまま頭からふらりと倒れ込んできた。

「冷え切ったもんは不味いんだよ」

預かった上半身をそっと寝かせて、二杯目を持ってくる為にソファを離れた。
温め直すココアを見ながら、下腹部に灯った熱を散らす為に冷水を飲んだ。
リビングに戻りテーブルの上にカップを置く。
膝を抱えて座っていた愛姫が顔を上げた。

「さっきの……ずるい」
「何のことだか」
「ふっ! 不意打ち! だったし、その、あの……! 何ていうか……」

涙目で訴えかける愛姫に、物足りねぇのかと見下ろすと、溜まった水が流れ出た。
……これぐらいのいじめはいいだろう? こいつ相手に相応の仕置きぐらい、たまには俺にも許されるはすだ。




*←→#

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!