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03


時間をかけて煮込んでいる暇はなく手抜きとも言えるできだが、とりあえず完成したリクエストのものを皿に移した。
テーブルに運んでからリビングの方へ目をやると、膝を抱えて座った愛姫の後ろ姿。画面の中のおもちゃ達が助け合って必死に逃げているのを、静かに見つめている。
反省しているのか落ち込んでいるのかどんよりと暗い背中だが、どちらにしても俺は言い過ぎてはいないはずだ。

「できたぞ」

声をかけると俯いたまま立ち上がり、俺の横をすっと無言で通り過ぎた。
溜めた涙を零すまいと必死なようで、顔に力が入っている。
席につき、いただきますと、聞き逃してしまいそうに小さな声で言ったが手を着けようとはしない。

「わざわざ面倒なもんつくらせたんだろうが。食え」
「今度からはちゃんと鍵かける」
「何度も聞いたけどな」
「……ごめんなさい」

いいからとっとと食えよと言っているのに、飯を運ぶ為じゃなく、泣きべそかいて謝る為にしか口を開かねぇ。
何だてめぇ、疲れきった夜中にこんなもんつくらせておいて食わねぇとか、まさか労力を無駄にするつもりか。

「自分で食えねぇなら食わせてやろうか? 口開けろ」
「……自分で食べるもん!」
「あっそ」

相変わらず単純でこういう操作は簡単な女だ。

「食ったら続き見るんだろ?」
「ハルも……一緒?」
「そうだな」
「分かった」
「熱いから気をつけろ」
「はい」

冷水でいちいち口を冷やしながら完食するのをタバコを吸いながら眺め、俺が態度を軟化させたせいで、鍵のことは愛姫の頭からすでに飛び、DVDのことに意識は戻っているなと考える。

「俺は先に片付けるからお前は続き見とけ」
「そうだった! あたしが洗う!」

……お前がやれば余計な時間を食うんだよ。今日はもうとっとと全部終わらせてゆっくりしてぇんだよ。
皿洗いに切り替わった脳で張り切った顔を見せた愛姫に、うまいココアを入れてやるからと言いくるめた。
……面倒くせぇな、ちくしょう。




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