イナズマイレブン
日課
「来たよ、夕香」
春。すっかり日常になってしまった見舞いも、全然苦じゃなくなっていた。雷門に転入したせいもあるし、俺がすっかり慣れてしまったせいでもある。
サッカーを止めて時間が有り余ってる俺は、二人の少女の見舞いが日課になっていた。
「じゃあ夕香、お兄ちゃんは美鶴のとこに行ってくるな」
そう言って美鶴のとこに行くのも日課。そして、目を覚まさない二人に、手を握りながらひたすら話すのも日課だ。
寂しいけれど、それなりに楽しんでいた。
しかし、最近悩みができてしまった。
サッカーのことだ。
もうサッカーはやめたというのに、円堂守という男がしきりに勧誘してくるのだ。
サッカーが好きなやつだと、惜しみ無く笑顔を向けてくる円堂に、ちくりちくりと胸が痛む。
正直に言えば、まだサッカーは好きだ。大好きだ。
しかし今の俺には、サッカーを続ける資格も、勇気も無いのだ。
「サッカー、か・・・」
サッカー、やりたい。
「・・・・・・」
「・・・・・・!?」
今、反応しなかったか?
「・・・美鶴・・・?」
呼び掛けて見るも、反応が無い。
「美鶴?」
本当に、気のせいなのか?
でもさっき、なぜ反応したように感じたのだろう?なにがそう感じさせた?
俺は、なんて話してた?
「・・・サッカーの話、していいか?」
やっぱり、
「勘違い、か・・・。またな美鶴」
握っていた手をそっと布団に戻してやり、俺は病院を後にした。
「・・・・・・っ・・・・・・」
エドガー
病室に響いたのは、聞こえぬ想い。
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