イナズマイレブン カミングアウト 豪炎寺視点 魔界軍団との試合後、お礼を兼ねたお好み焼きパーティーから何故かお泊まり会へと変化した今日のイベント。そのまま明日は合同練習をすることになった。 「みなさーん!部屋はくじ引きで決めますよ!」 「イナズマジャパンとみなさんで違うくじを引いて、同じ数字のジャパンメンバーと同室になってもらうわね」 夕食を終えてミーティングルームでゆっくりしていると、マネージャーが割り箸が入った入れ物を2つ持ってきた。 どうやら一つをイナズマジャパンで引いて、もう一つを一之瀬たちで引く。そうして同じ数字をペアとして、今日集まった他チームのメンバーが、ペアになったジャパンメンバーの部屋に泊まるということらしい。 集まったメンバーは、ユニコーンから一之瀬、土門、マーク、ディラン。ジ・エンパイアからテレス、セルヒオ。オルフェウスからフィディオ、アンジェロ、ブラージ、ジャンルカ、マルコ。ナイツオブクィーンからエドガー、フィリップ、ポールの、計14人が集まっていた。イナズマジャパンは目金を含めて17人いるから、3人は通常だな。 「あ、同じですね!」 「よろしくね!」 くじを回していると、早くもペアが出来てくる。(ちなみに今のは立向居とアンジェロだ) 引いた割り箸を確認すると、『14』と書いてあった。 「あ、豪炎寺さん数字ありですか?」 「虎丸は?」 「数字なしでした」 ということは、数字が記入されてない割り箸はハズレか。 「げ、数字書いてあんじゃねーか」 「Oh!5番ならミーと同じだよアキオ!」 「げ」 「おい、8番誰だ?」 「僕だよ。よろしくテレス・トルーエ」 「あ、テレスは基山ヒロトとなのか?」 「ああ、セルヒオは?」 「1番なら俺とだよ!ウシシ」 どんどんペアが決まって来て、俺とペアは誰かなと見回してみると、同じくきょろきょろとしていたエドガーと目が合った。ふっと微笑んだエドガーは、真っ直ぐ俺の元へ来る。 「14ですか?」 「ああ」 「こんなことを言ってわ失礼かもしれませんが・・・静かに眠れそうでよかった」 くすくすと笑うエドガーからは、初対面の時のような嫌味は消え、以外にも人懐こそうな笑みが浮かんでいた。 「まあ、あれは寝れないだろうな」 ついと視線を移した先は円堂、フィリップペアで、はしゃぐ円堂にフィリップが少したじろいでいた。 ペアができなかったのは虎丸、佐久間、壁山、綱海だった。綱海はなんだか残念そうな顔をしていた。 「・・・ん?」 待て。外れくじを引いたのが虎丸と佐久間と壁山と綱海。 「・・・俺は?」 11と書いてある割り箸を手に苦笑いを浮かべるマルコ。 「私だ」 「・・・ぇぇえええええええ!!」 無表情で割り箸を見せたのは久遠監督その人で、そりゃないよと半泣きのマルコの後ろで爆笑しているジャンルカと、悪戯っぽく舌を出す音無が仕掛人とみて間違いないだろう。というか間違いない。今楽しげに両手を叩き合わせた。 「まったく・・・」 「ふふ。おてんばなレディですね」 楽しげに笑みを溢すエドガーからは使命やプレッシャーなんかは抜け落ちて、ただの中学生の顔になっている。エドガーだけじゃない、テレスやマークたちも、笑い転げて騒いでいる。 なんだか嬉しい気持ちになってくる。 「みんなー!そろそろお風呂入ってちょうだい!」 「みんなで入ろうぜ!!」 ここが円堂のすごいとこだな。全員異論はないみたいで、むしろ乗り気だ。 「俺は後で・・・」 「ま、んなこと言わずに入ろうぜ」 不動も綱海に連行され、俺も断れば円堂に連行されるだろうから断らない。 「じゃ、荷物一旦置かせてよ」 「そうですね」 こっちですよと立向居がアンジェロを案内しだすと、じゃあ俺たちもとぞろぞろと移動し出す。 「俺の部屋はこっちだ」 「はい」 そうして俺も、エドガーを連れて一旦戻った。 「ここだ」 「おや」 エドガーを部屋に通して、まず机の上に広げたままだった数学の教科書諸々を片したところで、肩口から長身のエドガーが手元を覗いてきた。 「勤勉なのですね」 「そんなことは無いと思うが・・・まあ、毎日復習はしてるな。今日は無礼講だがな」 こんな日に机に向かうのは逆に野暮だろ、と冗談めかして言ってやれば、ははっと声を出して楽しげに笑われた。 「そうですね、机より私に構っていただかなくてはいけませんね」 「一応客人だしな」 二人でひとしきり笑った後、エドガーの荷物を隅に置いてもらい、いそいそと風呂の準備をする。 すると扉がコンコンと叩かれた。 「豪炎寺ー!行こうぜー!」 「ああ!」 いつにも増してテンションの高い円堂。それに答えてから、エドガーへと視線を移す。 「行くか」 「はい・・・ああ、ちょっと待ってください」 もそもそとかばんの奥から何かを引っ張り出すエドガー。 「カーディガンか?」 「はい」 引っ張り出したのはベージュのカーディガンだった。エドガーはそれをTシャツやジャージなんかと一緒に持つと立ち上がった。 「寒くはないんですが、どうしても手放せなくてね」 「・・・思い出があるのか?」 淋しげに言葉を告げるエドガーに何かを感じ、問い掛けた。 「・・・驚かれるかもしれませんが・・・実は私、一人の女性のことを二年も引きずっているんです」 淋しげな笑みを漏らすエドガーに、なんて言ったらいいかわからなくなる。 うちのマネージャーにもあれだけ甘いセリフを吐きながら、エドガーは一人の女性に未練を持っていると言うのだ。 冗談ではないのかと一瞬思ったが、エドガーの表情からそれが真実だとわかった。 「これは、その人が私にくれた、最初で最後のものです」 そして俺は、耳を疑った。 「二年前、これを彼女から貰った日に、彼女は彼女の母親に刺し殺されたんです」 [*前へ][次へ#] |