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イナズマイレブン
必然

不動くんは嫌われてるらしい。
私が思い当たるのは、あの日のことしかわからなかった。

「芦川」
夕食の後片付けが終わったから、自室に戻ろうと廊下を歩いていたら、後ろから声を掛けられた。
「鬼道くん・・・」
「大丈夫か?」
不意に問いかけられ、思わず首を傾げてしまう。
何のことだろう。
「不動に苛められているだろう」
「え?」
苛められてる?私が、不動くんに?
役立たずと言われてることだろうか。あれは苛めとは言わない気がする。
それに、これ以上不動くんを孤立させるようなことをして、練習に支障が出たら大変。
ここははっきりと訂正しなきゃいけない。
「苛めてないと思う」
やっぱり小さな声しか出ないけど、鬼道くんはちゃんと聞いてくれたらしい。
「・・・そうか。何かあったら誰かに相談でもしてみるといい」
珍しく柔らかい表情を見せて、そう言った。

だから、相談するようなことはないんだってば。

「うん。ありがとう」
私がお礼を言うと、鬼道くんは自室に戻っていった。


私も自室に戻ろうと思ったけど、ふと思い立って、ある人の部屋を訪ねた。



コツコツとドアを叩いてみる。
はい、という低い声と共にドアが開く。
相手は私を見ると軽く目を見開いた。
「どうした?」
「豪炎寺くん、ちょっといいかな?」



「不動か?」
私を部屋に招き入れて適当に座らせると、早々に切り出した。
正解。
初めは綱海さんのところに行こうかと思ったけど、きっと私を慰めるようなことしか言わないだろうなと思って止めた。鬼道くんには、大丈夫だと言ってしまったので、もう相談できる人は豪炎寺くんしかいない。

「あの、不動くんがみんなと馴染めてないのは私のせいなのかなって・・・」
私の口から紡がれた言葉に、豪炎寺くんは目を見開いて黙ってしまった。
珍しく、すごく驚いているみたい。

何か変なこと聞いちゃったのかな・・・?

「そういえば、芦川は真帝国のことを知らなかったな」
「真帝国・・・?」
帝国じゃなくって?

私の呟きに小さく頷き、「俺も人から聞いた話なんだが・・・」と話し始めた。


豪炎寺くんのしてくれた話は、とても衝撃的だった。
不動くんが昔してしまったことは、許されることではなかった。

鬼道くんが彼に対してピリピリしてる理由がようやくわかった。

「それに、あいつはあんな性格だからな。嫌われ者になるのは必然に近いのかもな」
ふう、とため息をつく豪炎寺くんも、不動くんをよく思ってないらしい。

これ以上不動くんの話をするのはよしておこう。

「・・・ありがとう、豪炎寺くん」

私はお礼を言ってすぐに豪炎寺くんの部屋を出た。



「必然か」

果たして本当にそうなんだろうか。


「必然・・・」





それにしても、饒舌な豪炎寺くんを初めて見た。

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あきゅろす。
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