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イナズマイレブン


ガタリと音を立てて、美鶴はベンチから立ち上がった。


もう練習も終わりに差し掛かった時だった。携帯を開いた途端に血相を変えた美鶴に、木野が心配そうに話しかけていた。
何事か・・・多分、行かなきゃとか、そんな言葉じゃないかと思う一言を呟いた美鶴は、迷わずグラウンドから飛び出して行った。
「豪炎寺くん」
「ヒロト・・・」
「美鶴ちゃん、どうしたんだろうね・・・」
「・・・さあな」
心配そうに話しかけてきたヒロトだったが、きっと俺から答えが返って来ないことは分かっていたのだろう。そうだよね、と呟いて木暮をストレッチに誘いに行ってしまった。
ただならぬ雰囲気で走っていった美鶴が気になる。しかし今ね俺たちにそれを知る術はない。それがわかっているからこそ、敢えて口に出したのだろう。どうしても分からないということをぐだぐだ考えているより、わからないと口に出して自覚している方が、案外楽だったりするのだ。
「美鶴・・・」
何があったのかは、後で美鶴に訊こう。
教えてくれるかもしれない。教えてくれないかもしれない。しかし友達として、好きになってしまった身として、訊かずにいれるわけがない。

何かあった時、真っ先に美鶴が頼れるように。
俺がいることを知っていて貰わなければいけないのだ。何かあった時、一人でなんとかしようとしないように。抱え込んで、壊れてしまわないように。

「美鶴・・・」
その為に、美鶴が来たら、笑顔で迎えて、話を聞こう。きっと近いうちに顔を出すだろう
ヒロト辺りを混ぜたらいいかも知れない。木暮たちなんかがいたら、空気が和むかもしれない。
二人きりじゃなくたっていい。


俺はただ、美鶴が笑っていてくれればいい。






















だが、それから美鶴が来たのは、ジ・エンパイア戦が終わってからだった。


そして食堂まで足を運んだ美鶴は、堰を切ったように泣き出した。






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あきゅろす。
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