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お前の笑顔が大嫌い(マサ蘭)
蘭拓前提のマサ蘭
嘔吐、暴力表現あり
蘭丸視点















突然部室の床に突飛ばされ、がつん、という音と共に後頭部を鈍い痛みが走る。
続けざまに腹を容赦なく踏まれ、ぐぇって小動物が潰れた時みたいな声が漏れた。
それでも尚ぐりぐりと俺を踏みつけて楽しそうに笑う憎ったらしい新入部員を思い切り睨み付けたが、あまり効果はなかった。
寧ろ相手を煽ってしまったようで、先程より酷く暴力を振るわれることとなる。
この時俺は、ちょっとお話があるんで部室で待っててくれませんかぁ?
お得意のにこにこ猫かぶり笑顔でそう話しかけてきた狩屋の言うことを聞いてしまった馬鹿な自分を呪った。
やはり神童に待っていてもらえば良かった。
…いや、駄目だ。
神童が居ようが居まいがこの状況はきっと変わらない。
それどころか無様に床に這いつくばる自分の姿を見せることになっていたかもしれない。
やはり、先に帰らせて正解だった。
それに万が一、神童が狩屋に目をつけられ暴力の対象になる、なんてことは避けたかった。
だって神童を泣かせていいのは、傷付けていいのは俺だけって決まってるから。


「この状況で考え事なんて、余裕っすね先輩。」


耳障りな声で、俺は現実に引き戻された。
痛みで瞑っていた目を開けば、とびっきりの良い笑顔を浮かべたゲス糞愚図野郎が俺を見下していた。
吐き気がする。
腹を強く踏まれたのも多少は影響しているのかも知れないが、俺を見下すこの気味の悪い笑顔に吐き気は増すばかり。
そんな俺の心情など知るよしもない糞野郎、狩屋は未だ腹にめり込んだままの足を一旦退かし、あろうことか再び俺の腹目掛け蹴りをぶちこんだ。
ぐぁっ、だったかぐげぇ、だったか。
これは本当に俺なんだろうかと疑いたくなるような酷く醜い声が漏れた。


「うわぁ、ひっどい声。」


煩い、お前に言われなくたって分かってる。
大体、誰のせいで俺がこんな声を上げるはめになっていると思ってるんだこいつは。
まるで他人事、と言った狩屋の態度に腹が立った。
仕方がない、こいつはそういう奴なんだ。
人間の中の愚図の愚図、狩屋はそう言った部類の人間だと言い聞かせ自分を落ち着かせた。
そしたら、すっかり忘れていたあの吐き気が襲ってきた。
あ、ヤバい。
慌てて狩屋を押し退け、手で口を塞ぐ。
おっと、とふらついた狩屋はやっと抵抗する気になったんですか?と俺の大嫌いな笑顔を浮かべた。
止めろ、笑うな、気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い。
何も言い返さず、顔を真っ青にさせふるふると震える俺を狩屋が不思議そうに見下げる。
しばらくして、あ、と狩屋が声を上げた。


「まさか先輩、ゲロっちゃう?」


びくりと身体が跳ねる。
気付かれた、これは非常に不味い、最悪の状況だ。
この悪魔が今の俺に何も危害を加えない筈がない。
これから起こり得ることを想像すると背筋がぞわりと粟立つ。
だが、止めてと狩屋に懇願するのだけは絶対に嫌だ。
こいつにだけは何がなんでも屈したくない、弱い自分を晒したくない、だからと言って嘔吐する姿も見られたくはない。
最早俺は歯を食い縛るしかなかった。


「ねぇ先輩。見ててあげるから、ゲロっちゃっていいっすよ。」


さも楽しいショーを見ているかのように、弾んだ声で狩屋は言う。
ふざけるな、あまりにも頭に来たもんだからそう怒鳴ってやろうと狩屋を睨み付けると、あいつはにやりって笑ったんだ。
今まで以上に、醜い最っ高の笑顔で。
それから何秒か後、汚れた床と粘つく口内の気持ち悪さに顔を歪める俺を見下して妙に冷めた口調できったねぇって吐き捨てた。
その心無い一言に、怒りとか羞恥とか色々な感情でじわりと目頭が熱くなって、俺は産まれて初めて死にたいと思った。








END

後書き
蘭丸ちゃんいじめが楽しくて仕方ない。

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あきゅろす。
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