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同じ虫(霧野と神童)
蘭丸と拓人
気持ち蘭→拓
あ、また泣いてる、と人気の無い校舎の裏でしゃがみ込む神童を見つけた霧野は彼の元へと歩みを進めた。
「酷い顔。」
神童に近づくなり霧野は呆れたように呟いた。
大分長い間泣いていたであろう神童の赤く晴れた瞳からは未だ涙が止まることなく溢れている。
しゃがみこみ、神童と目線を合わせた霧野はそれを優しく人差し指で拭った。
「…知ってる。」
「じゃあ泣くな。」
ぽつりと弱々しく、そしてどこか拗ねたように言葉を溢した神童に霧野は間髪入れずいつもより少し強い口調で、いつまでたっても目を合わせようとしない彼にそう言い放った。
「…。」
「泣くなってば。」
「…っ。」
「……泣くなよ。」
俯き、黙ってしまった神童の瞳からポロポロと零れ落ちる涙に霧野は胸が締め付けられるような痛みを覚えた。
神童は、あまり上手く感情をコントロールすることが出来ないくせに何でも一人で抱え込もうとする。
嫌なことも、辛いことも、悲しいことも、苦しいことも、全部一人で背負って、そして押し潰されて、どうしようもなくなって、崩れて、泣いて、その繰り返し。
神童にはもっと前を向いて欲しかった、悲しそうな顔をしないで欲しかった。
…それから、もっと自分を頼って欲しかったと霧野は服の裾をしわくちゃになる程握りしめた。
前に、泣き虫な神童なんか大嫌いだ!と、霧野は泣きながら酷い言葉を吐き捨てたことがあった。
嗚咽を溢しながら泣く霧野の前で、神童は静かに歯を食い縛りながら泣いていた。
違う、俺は神童にこんな顔をさせたくて言ったんじゃないんだ、だから泣かないでよ、と霧野がいくら心で叫んでも神童にはこれっぽっちも伝わらない。
どうすることもできなくなった霧野は、その日神童を残して走り去った。
無我夢中で走っていたから、途中河川敷辺りで派手に転んだ。
その時に擦りむいた鼻に貼った絆創膏をさすりながら、霧野は静かに泣きじゃくる神童を見下ろした。
「俺じゃ、ダメなのかよ…。」
悔しくって、情けなくって、霧野の瞳からはあの日と同じ感情から込み上げた涙が零れ落ちた。
もしも今、神童に自分の気持ちを伝えられたのなら。
弱い神童も、情けない神童も、頼りない神童も、泣き虫な神童も、みんなみんな好きだよって、そう伝えられたら。
…いや、今の関係が崩れてしまうのを恐れている弱虫な自分では、そんなこと到底無理だと霧野は項垂れた。
END
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