☆こっちむいて、ハニー(智夢)
釣具の手入れをしていたり、ラジコンをいじっていたり、絵を描いているものはなんでしょう。
正解は、大野智です。
二人っきりでいるときの。
今日は智くんが仕事お休みだよって言ってくれたから、智くんのお家に来ているわけなんだけど。
「… 」
黙々と釣竿を磨いています。
「あのー、智くん?」
「…ん?」
「いや、なんでもない…」
「そうなの?」
「あ、うん」
「ふーん?」
智くんはまた釣具に目を落とす。
てゆうか、実のところなんでもなくない!
普通、カップルが同じ部屋にいたらだよ?
男の方から、こうガバーっとくるもんじゃないの!?
雑誌やマンガにも書いてあったし、友達もそう言ってた。
付き合って3か月以上経つけど、手を握るどころか指一本触れてこない。
あれ?
よく考えたら、『好き』とか言われたことあったっけ…?
年の差あるし、もしかして女と思われてないとか?
彼女でいたと思ってたのは私だけだったのかな。
本気なのにな。
なんだか泣けてきて、それを智くんに知られないようにベッドでうずくまっているうちに、私は眠っていた。
目を覚ますと、心配そうな智くんの顔があった。
「あれ…?私…」
「あ、おはよう」
「ごめんなさい!私寝ちゃって… 」
「気にしないで 」
智くんはにこっと笑うと、すぐに心配そうな顔をした。
「やよい、退屈だった?」
「そ、そういうわけじゃないよ!」
「でも、俺、自分のことばっかしてたから…」
「…本当につまらなかったわけじゃないよ。ただ…ちょっと淋しかっただけ」
寝起きだからなのか、思ってることペラペラ話してしまっている。
智くんに嫌われるかもしれないのに。
「智くんと二人っきりでいるのに、私に触れようともしないし…」
「やよい、俺…」
「私って妹扱いなのかな…?そんなに私、魅力ない…?」
やばい。また泣きそう。
下唇を噛んで堪えていると、ふわりと智くんの体温に包まれた。
「!?」
「あのさ、オイラ、やよいのこと大切にしたいんだ!」
「ど、どういう…」
「オイラ、一応、げ、芸能人だし、やよいは普通の女の子だろ?だ、だから、やよいは俺が守らなきゃ、いけない」
「智くん…」
「それに、やよいのこと大切だから、やよいのことみんなの前でも堂々と守れるくらいになるまで、か、簡単に触れたりしちゃいけないって、言い聞かせてた」
「…」
「それが反対にやよいのこと傷つけてるなんて思わなくって…ごめん!」
「ううん」
「本当にごめん。なんかやよいといるだけで幸せで、俺、自分勝手なことしてるのに、やよいも楽しいんじゃないかって甘えてたんだ」
そっか。そうだったんだ。
「私こそ、智くんとしたいこと、ちゃんといえばよかった」
…って、あれ?
智くん顔赤いですが…?
「智くん…? 」
私が智くんの顔を訝し気に覗き込む。
「ばっ、お、オイラ、なんも考えてないから!」
「あはははは」
「笑うなー!」
なんだ。
なぁんだ。
私のことをこんなに考えてくれてたんだ。
ちゃんと女の子として見てくれてたんだ。
言わなきゃわからないのは、智くんも同じだったんだ。
「じゃあ、絵の描き方教えて?」
「もちろん!まずは…」
「まずは?」
「描きたいものが浮かぶまでぼーっとします」
「…」
幸せならマイペースで…いいよね?
end
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