freeze
10
「…もう少し危機感持てよ」
『え?』
真剣な表情で言われるが一体何のことなのか皆目見当つかない。
「出題内容を変えとけってことだよ」
そう言うと強く掴んでいた手首を離し、日向くんは出口へと歩いていってしまった。
『、…どういう意味?』
取り残された玲は一人、その真意を考える。
あまりにも出題内容が簡単だったとか?いやいや、雰囲気的にそういう意味じゃなかったよね。
日向くんの真っ直ぐな目を思い出してふるふると首を振る。
…じゃあ一体何に対して?あんな真剣にいうんだもん、冗談なんかじゃない、はず。
だったら……みんなに私の能力がバレることを懸念して言ってくれたのだろうか。…でもそしたら棗くんの能力だってみんなに受け入れられているし、危機感を持つ必要はない。
『そういえば…学園は私の能力の度合いを知らないんだよね……あれ?』
自ら呟いたその言葉にはっとする。
もしかして……危機感を持てというのは、学園に対してなの?
しかし。
…そんなことないか。学園が一番安全で信頼できるんだから。警戒心を持つなんておかしな話よね。
「玲〜?みんな集まってるよ」
『あ、ごめんっ、直ぐに行くね』
結局、棗の警告の意味を玲は理解できずに思考を中断してしまったのだった。
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