幻愛夜想曲 1 「あっちよ!」 声と共に夜の通りを五人の人影が駆け抜ける。 目指すその先には、やたらと大きな図体の異形―凶徒。 およそ現代では考えられないような化け物を、この五人は必死で追っていた。 (…このままでは差が付けられてしまう) 「私が止めます!」 美猪(ミイノ)はそう言うと足を止め、軽く呼吸を整えた。 『arr wy ceyely quyee oaree ann…』 そして、この世に存在しているはずもない言葉を紡ぎ始める。 それは決して大きくもなく。 しかし、辺りに響いたその声は凶徒に届き、しっかりとその巨大な図体を地に縫い止めた。 . [次へ#] |