白百合の憂い 一部 3 刹那は俺の方へ身体を向けると ふわりと笑った その笑顔が見れて嬉しかった でもいつもの笑顔じゃねェ気がしてならなかった 刹那は手を差し出してきた 着物に隠れた白い手を いつもみたいに赤く濡れていない 綺麗な白い手を 「刹那…」 俺はつられるように手を差し出した でも遠くて届かない 刹那は一歩も動こうとしない ただ手を差し出して笑っているだけ 俺は仕方無く、手を差し出したまま歩き出した あと少し あと少し あぁ刹那 やっと逢えた やっと間近で顔が見れた あとちょっとで指先が触れそうな時だった 刹那が真っ赤に濡れた [*前へ][次へ#] [戻る] |