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初恋(大人向けBL)完結
1
どうして、帰ろうとする優を引きとめてしまったんだろう。
 もう二度と恋なんてしないと誓ったはずなのに、トラウマの引き金になった幼馴染に情けなくも引きずられてる。耳に甘く残るかすれた声や、やさしい眼差し、しぐさや匂い、クセのひとつまで、今でも自分の脳裏には大好きだった優の記憶が鮮明に残ってしまっている。
 認めたくはない。まだ優のことが好きなんて事。
 次第に早まる呼吸にまぎれるようにキリリと痛む片頭痛に意識が向いた。
 酒の勢いだ、これは――――。
 そう思いこむことで優との甘い時間を堪能しようとする自分は、きっと誰よりも卑怯な人間だ。


***


「優……、優……っ」
 熱い……。体じゅうが、熱にうかされてるみたいに。
 興奮が熱気に変わって、全身の血管をかけめぐってる感じがする。
「祥汰……」
 全ては、目の前にいる男のせい。
 優が、俺の顔を両手で包み込んで、口付けてるせいだ。
 少しでも目を開けていると、優の吐く白い息が自分の口の中に含まれる様子までもが映り込んでしまう。再会してから、何度かこの唇に自分を奪われた。無理やりにでも、やさしくされても、痛いくらい心が反応していたんだ。
 ……今だってそう。吐息のなかに混じったほろ苦い煙草の味のひとつまで、今の俺は鮮明に脳裏に焼きつけようと必死になってる。
「ん……っ、ふ、う……」
 夢中で唇を貪った。だらしなく開けたままの口の端から漏れ出した唾液のすじまでも、優はすべてのみこんでいった。たまらず首に腕を回して、アイツの顔をきつく抱きよせる。すぐに優の腕も、体に回された。
 糸を引いて、ピチャピチャと濡れた卑猥な音を出させて。
 もつれるように壁際に寄りかかり、次第に体が斜めに倒れていく――――。
 フローリングに横たえた俺を見、頬を撫でながら「祥汰」と呼ばれる。唇が上気してあかく濡れてる。その様子をみるだけで、得も言われぬ興奮が溢れだして、背筋をゾクゾク震(ふる)わせる。

「……どこまで、いい?」
「え……」
 キスの雨にやられてトロンとした麻酔状態のなか、少し戸惑ったような声が聞こえた。
「聞いとかねえと……、途中で止められる自身なんか、ねぇよ」
 何を求めているのか。更に濃厚になる口づけと、余裕のない口ぶりから分かってしまう。
 それまで顔に充てられていた手が甲をつかって首筋を撫ではじめると、鼓動はさらに激しくたかぶりだした。
「俺は、祥汰を自分のモンにしたくて、たまんねぇ。今すぐ抱きたい。お前は……、嫌じゃ、ないか?」
「……じゃ、ない……っ」
 柔い余韻が、鎖骨までのびてきた。肌の上をなぞられるたび、気持ちよくてふるえた。
 さっきからもう、俺のアソコは痛いくらいに反応してる。優の唇と手の愛撫に、理性じゃ抑えられない欲求が発情しはじめてるんだ。
 ましてや、萩野にセックスの最後まで教わった今、途中までとか、きっと自分の方が無理だ。
「無理……。途中までとか、無理。俺、体がもう……」
 優のが欲しくてたまらない。
 そう、体が甘い悲鳴をあげてる。
「良かった……。拒否られたら俺もう、死にそうだったから……」
 優は顔をあからめて笑って言った。けど、すぐに俺の胸元に顔を埋めてかくしてしまった。
「あ……っん」
 柔らかい毛先が服の上から肌をくすぐり、重なり合った体と体で、お互いの心音が伝わってきた。
 また、どうしようもなく泣きそうなくらい胸がしめつけられ、心がキュンと鳴いた。

 優は、俺の全身をくまなくキスしてまわった。本当に、足先からひざ裏、薄い陰毛が見えてしまう内腿(うちもも)までも。時には手で愛撫し、舌先でねぶり。……こそばゆい感覚は次第に熱くじれったい愛撫に変わり、優が触れるところすべてに感じて喘いだ。
 俺のアソコは触れられてもないのにビクンビクンと波打ち、卑猥な場所の付近を入念に舐められたときには、たまらず興奮を示して勃ちあがった先端から、いくつも先走りが溢れて自身を濡らして行った。
 優の手は大胆に開かされた陰部の付近を刺激するようにやんわりと揉みしだく。その動きに感度と心を同期させて息が上がってきた頃、急に愛撫する手が上に這い上がってきた。てのひら全体をぺったりと素肌に張り付けたまま、一度、腹部を撫で、わき腹をくすぐり……、
「は、ぁぁ……っ、やだ、くすぐった……」
 しびれだか快感だか分からないものがじわりと下半身から上がって来た。なぜかアソコに物欲しさを感じてしまい、もじもじと腰をよじった。
「お前が感じてる顔、もっと見てぇ……」
 優の顔が見える……。
 覗き込まれてる。
 しなやかな指に翻弄されまくって欲望むきだしに喘いでる俺の顔を……。
「……めちゃくちゃエロい」
 これ、どうだと悪戯につぶやくと、早くもピンとそそり立ってる乳首の片方に爪をたてて抓まれた。
「う……っ、あ、あぁ、ん……」
 小さな突起を摘み上げられ、ジンジンと痛い刺激を与えられる。指の腹でこねくりまわし、敏感にさせたところで強く引っ張られる。
「ひ……、んっ! 優……!」
アメとムチのような、優の愛撫。痛みのあとは甘い快感が襲ってくる。疼いては悶え、やさしくもてあそんでは痛みでいじめる。
 自分のペニスは、最早先走りの域を超えて、涎みたいに透明の我慢汁がいくつも溢れ出していた。
「……祥汰ぁ。お前、可愛い……、スゲエ可愛いよ」
優は、ものすごくイジワルそうな顔をして、それからも俺の体を上気させる。
 快感で……、気持ち良くて泣けると思ったのは初めてだ。
 
 

 フローリングの上に四つん這いになった俺を、もっと腰を上げろと言わんばかりに優の腕が高く持ち上げる。死ぬほど恥ずかしい恰好で男を求めた直後、中に埋まっていた欲望が、ズン!! と奥まで突き上げた。
「うあぁっ、ああん、……ゆ……、もっと……っ、もっとぉ……」
 奥深くまで挿しこんだ楔(くさび)を、ズチュ……ッと音を立てて先端ギリギリまで引き抜いた直後……、さらに強いピストン運動とともに、大きく膨れ上がったそれが、何度も何度も俺の中に穿ち始めた。
「あ……、あ……、あ、ああぁぁぁぁぁぁ……!!!」
 優の腰の動きに合わせて体が跳ねる。唐突に押し寄せた、苦しみにも近い快感に耐えれず、力なく床の上に顔を横たえた。
 その体を引き摺られ、逃がすまいと血管の浮き出て骨ばった腕が腰ごと強くたぐりよせる。
 息継ぐ暇もなく、激しく打ち込まれる。中に直接感じる優のペニスは、興奮を現すように、時に痙攣(けいれん)させながら犯し続ける。
 男のモノでイカされる快感を知ってしまった体は、タチが悪い。
 奥深くまで優を感じると、そこにいくつもの繊毛体が作られ、快感だけを取り上げているかのように内壁が収縮して息も出来ないほど身悶えさせる。体は知ってるんだ。自分の中に知らないうちに開発された、気持ちいい場所があることを。
 ペニスを打ち込まれてしまえば、俺の急所は逃げ場を失い、ズンズンと突かれるたびにめくるめく甘い余韻を迎えるばかり。
「ダメっ、そこダメぇ! も、弱……っ、んあああああぁぁ……!!」
 床にしがみついても、泣いてみせても、優の腰つきが収まらないかぎり、この快感攻めからは解放されない。口ではダメと言いながら、俺は動物のように激しく腰を振って優の動きに応える。だらしなく開けられた口元からは延々と涎が溢れ出し、どう見てもよがってるようにしか見えない有り様だった。
「ダメ……、イク……! も、我慢できな……っ、…………!!」
 中に優を感じるたびにはちきれそうに反応していた俺の分身は、こらえきれずに精子を吐き出した。
「……まだ、無理だぜ。終わらせてやんねぇ……よ」
 収まらないピストン運動のせいで、白濁液は辺りに飛び散って自分の体も滑らせた。あろうことか、優は後ろから犯しながら、性を放ったはずの自身を手の平に包み、激しく扱きはじめた……!
「いやっ、んぁぁぁっ、も、無理……、あぁぁっ、出ない、よぉ……っ」
「祥汰ぁ、最初に言っただろ……、途中で止めれる自信ねぇって……」
 頭がおかしくなりそうだった。
 死ぬと……、死ねると思った。
「どんだけ我慢してきたと思ってんだ……」
 その夜、どれだけ抱かれたのかさえ、覚えがない。
 熱い性を体の奥に感じても、すぐにまた抱かれた。部屋中に精液の卑猥な匂いがこびり付いている。
 自分の中で、子供の頃から張りつめていたタガが一瞬にして崩れ去る音を聞いた気がしていた――――。


***

『祥汰……、好きだ』

『――そういう言葉、簡単に使わないで』

『バカ。真剣に言ってんだろうが』

『……見えないし、そうは思えない。俺ら、今日あったことは忘れた方がいいと思う』

『ざけんな。んな軽い気持ちで抱けると思うかよ?』

『…………思う』

『ああ!?』

『だって……俺は優に、一度フラれたんだから』

『誰が振るか! あれはなあ、お前が可愛いすぎるから……、ああ、クソ。―――とにかく、フラれた気分満点なのは俺の方だってこと』

『意味が……』

『ああ。分かんなくていいから。とにかくもう一回俺を好きになれ。萩野と別れろ。そうしろ』

『む……『無理じゃねえ』

『い……『嫌じゃねえ』

『…………』

『黙んなよ』

 まるで昔に戻ったように優と会話してる自分を、どこか不思議に感じる。
 ほんの数日で、あれだけ距離をおこうとしていた相手と、ベットを共にしている。
 好き合ってるのとも違う、かといって、体だけの割り切った関係とも言い難いのだ。
 これは浮気になるんだろうか。
 いや……そもそも萩野と付き合ったつもりはない。

 だけどおそらく……、これまでのように逃げる一方じゃいかなくなる気配が忍び寄っている。

―――――そこはかとない不安感を抱きながら、久しぶりの優の腕の中でうとうとと微睡んでいるうちに、眠ってしまった。


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