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初愛ーはつあいー
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***



それは、本当にあっという間の出来事だった。

俺が失恋したその日は珍しく、萩野さんが公休をとっていて店にいなかった。

そんな日に限って問題は起きるもので。

俺は朝からずっと調子があがらなくて失敗続きで先輩に怒られっぱなしだった。

事件は閉店時間も迫った午後21時。

サービスカウンターで電話を受けたアルバイトの女の子が、血相をかえて店内アナウンスでデイリーの担当主任を呼び出したことがはじまりだ。

次いで、俺の名前も呼ばれた。

話をきくと、今日の夕方に買った牛乳の賞味期限がきれていたとかで、電話の向こうの客がひどく激昂しているという事。

午後のデイリー商品の陳列担当はたしかに俺だった。

その時、品出しのとき、俺が間違って返品用に別のケースに入れていた商品を売り場に出してしまっていたことが発覚した。

だしてしまった期限切れの牛乳は全部で5本。

すぐさま主任が商品棚へ走っていき、残りの4本は回収できた。


「まあ、やっちまった事は仕方ないから。次から絶対気をつけろよ。けど、まいったなあ。お客さん激怒しちゃって店の責任者をよこせって言ってんだよ」

「え……」

「今、萩野に連絡とってんだけど、携帯呼び出しても出ねえんだわ」

「………」


どうしよう。

俺のせいだ。

俺のせいで、何も関係ない萩野さんまで巻き込んでしまった。

せっかくの休みだったのに、何か月ぶりかの連休だって喜んでたのに。

俺のせいで迷惑かけた。

俺がちゃんと確認しないで出したから……。


「ばーか。失敗の一つや二つで泣く奴があるか。
アイツ、今日はまる一日専務の自宅にいるっつってたからさ、僻(ひが)みついでにビビらせてやりゃあいいんだよ」


いつのまにか涙がいっぱい溢れだしてきた俺の頭を、ぶっきらぼうな橋本さんの手がぐしゃぐしゃとかきまぜた。


「ああ、お嬢さん戻ってきてんの」

「そーそー、今夜は豪勢にホームパーティだとかなんとか言ってたっけか」

「え、専務……」


二人の会話についていけず、いまだ髪を掻き回されている俺は、橋本さんの手のなかで頭をグラグラゆらしながら聞きかえしていた。



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あきゅろす。
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