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初愛ーはつあいー
3


通話ボタンを押すやいなや、普段よりもいっそうしゃがれたダミ声が受話口から漏れだしてきた。


『あーもしもし?元気か?お前昨日なあ、どっかの派遣の兄ちゃんと仲よく話してたんだろ?』

「えっ、はい?」

『萩野がさ、遠目でお前らのこと見てたらしいよ。塙の帰りが遅いけどどうなってんだって俺んとこにガンガン電話よこされてさ。もうたまったもんじゃねーわ』

「は?どう」

『んなもん俺に聞かれても知るかっつーの。大体アイツ取り乱しすぎなんだよ』

「え、なにが」

『萩野って嫉妬がはいると暴走しやすいからさ、俺なりに気になってたんだわ。もしかして昨日のことで強引にヤられちゃって、気まずくなってるとか?』

「えっ」

『まあーいいや。駐車場に居るんだよな、OK。あ、そうそう、あんまり知らねえ奴に付いていくんじゃねーぞ。萩野がうるさいから』

「え」

『あと先輩をこき使ってんじゃねえよって俺からの伝言、アイツに伝えといて。じゃーな、おやすみー』


ブツッ。

合いの手を入れる間さえなく、一方的に話を終えると、橋本さんの携帯はすぐさま切れてしまった。

なんなんだろう。

なんなんだよ。

狐につままれた気分が消えないまま、一度落ち着こうと溜息ひとつ、フェンスに寄りかかる。

しばらくすると俺の頭のなかは、さっきの橋本さんの言葉がグルグルと頭のなかでリピートしながら流れはじめた。

きのう萩野さんが、俺と山下が一緒にいる所を見てたって言ってた。

昨日は朝から別行動だったはずなのに、俺のことを見てたって。

しかもなかなか帰ってこない俺を心配して、何度も何度も橋本さんに電話してたって。


「………」


思いかえすのは、店の入り口前で俺を待ってた萩野さんの姿だ。

なにかにイライラしているようで、理由は分からないけど、俺に対して怒っているみたいで。

そのうえ、山下に告白されたことを話したとたん、萩野さんがまるで豹変して、俺はベットに押し倒されて……。


「蒼太」

ふと名前を呼ばれた気がして、しゃがみこんだまま頭だけ上げた。

よりかかったフェンスの向こうに、萩野さんとそっくりな顔がある。




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あきゅろす。
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