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初愛ーはつあいー
2


山下は自身のこともペラペラ喋りながら、まるで質のわるいナンパ師みたいな質問を次々と俺に投げかけてくる。

なんなんだコイツ。

しかも走っても走っても付いてくる。

チューインガムのように纏わりついてくる。

だから俺は走った。

業務も忘れて途方もなく走り続けた。

が、そいつはどこまでも追いかけてきた。

まるで背中と背中を両面テープで貼りつけられているかのように、俺の後ろを追ってくるんだ。

山下に出くわしてから小一時間がたったころ、俺のほうも結構どうでもよくなってきて、もう逃げることをやめた。

というか、その山下のせいで肝心の営業回りがまったくできていないのだ。

逃げるのをやめた途端、奴は当然と言わんばかりに俺の隣にピタリとはりついてきた。


「蒼太くん、彼女とかいんの?」

「いないです」

「ふーん。じゃあ、彼氏は?」

「は?」


何言ってんだとおもいきり睨み付けてやるが、山下はシラっと笑っている。


「だって蒼太くん顔かわいいし」

「あのなぁ……」


面倒くさいなあもう。

うるさい。

ウザい。

どっか行けよ馬鹿。


「可愛いよ、髪の毛フワフワだし、小っこくて華奢だし童顔だし大人しいし」

「………」

「俺、きのう蒼太くんのこと見かけて、思わずキュンとしちゃったんだよね」

「………」


自分のコンプレックスを真正面からつき刺してくる山下の攻撃に耐えながら、なんとか二人あわせて200通のノルマを達成したときは、夕方19時をとっくに過ぎていた。

これでようやく山下から解放されるとおもいきや、帰りのみちなりに突然腕をつかまれた。



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