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初愛ーはつあいー
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***



翌朝、始発でのりこんだ快速の指定席に相席で座ったところで、ウサギみたいに真っ赤になった俺の目を覗きこみながら、数日ぶりに萩野さんが話しかけてきた。


「目、腫れてるよ。昨日眠れなかった?」

「あ……少し」


本当は、まともに熟睡できたのは数十分程度だったんだけど、ちょっと恰好つけてすこしと言った。

俺の手荷物をはさんで隣に萩野さんがいる。

それだけで、心臓が焼けこげたように熱くなる。

失恋してもまだ、萩野さんへの恋心は順調に発育をつづけているようだ。


「蒼太、俺の所まだちょっと余裕あるから、荷物こっちに置いときなよ」

「え、でも」

「いいから。このままだと狭いでしょ」


じゃあ……と荷物を手渡したところで、俺の顔をのぞきこんでくる萩野さんの視線に気づいた。

しかも何気なく顔を上げたせいで、綺麗なこげ茶にすきとおった二重瞼とばっちり目があってしまった。


「ようやく俺と話してくれたね」


そう言って俺をみる萩野さんは、いつもと同じくふんわりした愛嬌のある笑顔でニコニコと笑っている。

胸の奥からモヤモヤとしたわだかりのようなものが沸きあがってくるのを感じた。

自覚するまでもなく、萩野さんへの未練の気持ちだ。


「……すいませんでし」

「謝るのは無し!」

「す、すいませ」


いいかけて、はっと気づいて口を噤んだ。

萩野さんと目があう。

まるで子供みたいなやんちゃな顔をして、しーっとすぼめた口元に人差し指をたてて俺を見ている。

俺が押し黙っていたら、口元に充てられてた手が伸びてきて、久々に頭をくしゃくしゃっと撫でた。

ぶっきらぼうにひっかきまわす橋本さんの手つきとは全然ちがう。

ペットでも可愛がるように、もしゃもしゃした俺の髪を優しく触ってくれるんだ。



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あきゅろす。
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