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REN†ALーれんたるー(完結)
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***



――出したばかりの赤色のインジケーターが、床を跳ねた衝撃でペンの中へ戻ってしまった。

「しまった」と即座に拾い上げ、使い慣れたステンレスボディをノックする。

PARKER製品独特の、洗練された金属の弾ける音を聞き、雨宮は思わず胸を撫で下ろした。

壁の向こうを見やる。

時刻は24時より少し前。有紗はそろそろ寝ついた頃だろうか。

あれから30分。

5年以上苦楽を共にしてきた愛用のペンシルをうっかり落としてしまうほど、物思いにふけっていたようだ。


『有紗の様子がおかしい』


異変に気付いたのは、家に戻ってしばらくしての事だった。

あれほど大好きだった風呂に、入りたくないと言いだしたのだ。

いつもなら夕食前に必ず入浴を済ませ、洗いたての濡れた髪でリビングへやってくるあの子が、今日はしきりに風呂を嫌がった。

「学校で何かあったかい?」と聞くも、口を割ろうとしない。

そのうち雨宮の不信感が伝わったのか、「寝る前までには入るから、パパさんは絶対に見に来ないで」と……。

必死に何かを隠そうとしているのか、話をしている間、有紗は一度も目を合わせようとしなかった。


(あの態度は何だ……。どうして急に風呂を嫌だと……?)


年齢よりもかなり幼くは見えるが、あの子も16歳の男の子だ。

一般的な家庭なら、ただの反抗期として洗い流せる些細な出来事だったかもしれない。







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