REN†ALーれんたるー(完結) 6 半泣きで見下ろした股の間に、慈しむように瞳をほそめた上條が、うっとりとしながらも、どこか儚げな表情で射精する有紗の顔をみあげている。 幸せと苦しいものが紙一重になった、不可思議な体液を吐きだす。 悦楽にひたる間もなく、アナルにいっそう要領の増した熱いものがあてがわれるのを感じた。 それは、熱があるんじゃないかと思うくらい、とってもあつくて、大きくて。 ほんの少しずつ、有紗のなかへ入っていくたび、切なそうにビクビクと震えている。 「……いい?」 もうほとんど息をかすらせながら、半分ほど入ったところで首元に顔をよせて上條が聞いてきた。 「いいよ……っ」 今更……なんて有紗はおもったけれど、黒いシャツの背中をぎゅっとにぎりしめて、小さなこえで「抱いて」と言った。 男にからだをひらかされて、女のように抱かれるなんて。 たしかに、最初のころは、屈辱でしなかった。 猟奇的に執着してくる上條のことを、『自分にひどい仕打ちをする怖い男』としかおもっていなかったし、雨宮との関係をもちだされて脅されたときは、本気で憎んだ。 要求される中に、上條の言っていた『愛』というものが、そのときは微塵もみえなかったからだ。 「あーちゃん」 上條に、そっと両肩を包みこまれる。 次第に汗ばんだ体温がのしかかり、有紗はハァ……、と小さく溜息をこぼした。 過去に思い置いてきた負の感情のなかに、上條への恋愛感情が、今はゆっくり溶け込んでいる。 まるで玉虫色に移りかわる自分の気持ちがとても不思議だ。 やがて秘孔にあてがわれる彼の熱さが、せっぱつまって蕾をおしあげる。 「あ……っ」 とつぜん愛しさがこみあげて、思わず背中からブルリと身悶えた。 『今から俺の目の前で服脱いで全裸になってよ』 「………っ」 なぶられるまま言いなりになっていたあの日の記憶が、なぜか突然よみがえる。 一枚服を脱ぎ捨てるたび、悪魔のような笑顔を浮かべて有紗をみていた、上條の顔が。 屈辱と恥ずかしさから、いますぐ消えてしまいたいと思った、あの頃の記憶が。 『嫌?約束忘れたの?俺の言うこと、なんでも聞くんでしょ』 止まることをしらない上條の、欲望の糧にされたこと。 服もなにもかも脱ぎすてた格好で、四つん這いになれと強要されたこと。 『ぼ……僕、の……アナルを……舐めて、ください』 自ら尻をわって、自分でもみたことのない恥ずかしい場所を上條朔夜に晒して。 想像もつかない狂気で、真っ白だった心と体をめちゃくちゃにされたこと。 どうしようもできない無念さと、男としてのプライドをズタズタにされた怒りと上條への恐怖と……、それでも雨宮に嫌われたくない一心で、ひたすら凌辱に耐えてきたこと。 この人だけは何があっても、絶対に好きにはならないと誓った。 ぜったいにぜったいに、好きになんてならないと。 あのころの、やりきれない怒りと汚辱でかためられた気持ちが、いつからこんなに変化してしまったのか、有紗自身にも分からない。 どうして今、姿をくらませた上條にこんなにも会いたくて、愛しくてたまらない感情に埋もれているのか。 記憶のない子供のころから有紗を好きだったと言い、それほど長きにわたって有紗へ執着してきた彼の狭愛が、どうしてこんなに心地いいと感じるのか。 このひとの腕から逃れるために必死であがいていたのは、僕だ。 『最低な人間だ』と繰りかえし罵ってきた。 一方的に抱かれながら、上條を絶対に許さないと心に誓っていた。 なのに、今はどうして抱かたいと思えるんだろう。 酷いひと、悪い男なのに。 どうして僕は、朔夜さんのことが、こんなに好きになってしまったの。 非情なことばかりされたのに、会いたくてたまらなくなるのは、なぜ。 分からない。 ただ、おしつけられた唇の柔らかさに、もっと胸があつく高鳴るだけ。 有紗のことを気づかいながら、より深く侵入してくる上條の熱さに、下半身を目いっぱい震わせて悦ぶだけ。 上條朔夜に抱かれている今が、どうか夢ではありませんようにと、ただただ祈るだけ。 上をみあげて、有紗よりも、もっと泣きそうな顔をして腰をうがつ上條を、強くだきしめるだけ。 いまはただ、朔夜さんのことが好きなんだと、こうして全身で感じるだけで精いっぱいだった。 [*前へ][次へ#] |