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REN†ALーれんたるー(完結)
9





乳白色の、うすやみの向こうから茉央がみている。

訳もわからず、顔が上気した。


「レオ、おはよう」


茉央の気配は、即座につたわった。

両肩を押さえつけ、身体の上に体重ごと乗りかかってきたのだ。

戸惑う時間もなく、唇にしっとりと柔らかい『何か』が押しつけられる。

それはとても軟くふっくらとしていて、唇にこすれるだけでマシュマロのようにくにゅんと動くもの。


「………っ」

「んふ……」


そのうち、とろけるような熱まじりのしっとり濡れたものが、ゆっくり歯型をたどりながら唇のなかへ押し入ってきた。

あまりにあまく濃厚な感触に、心臓がドキンと飛びはねる。

時折じゅるりと響の唇をすすり、蜂蜜みたく甘い液体が、なめらかな感触とともに口内からあふれだす。

ねっとりと甘い『それ』が、響の舌を絡めとった。

されるがままの兄の唇は、たびたび口のはしから唾液をあふれさせ、無意識のうちに錯綜(さくそう)する舌は、何度となくクチュクチュと音を鳴らして吸いあげられた。


「………っ」


昨日までは、弟の身体のかわきを癒すために行っていた、性的行為。

茉央の気持ちを知ってしまった今は……、自分では到底返してやることのできない、ただただ悲しいだけの行為。


「レオ……っん、ふ……レオ……」


口内が甘ければあまいほど、茉央の心がさびしさで飢えていると訴えているようだった。


「―――――っ……!」


おもむろに持ち上げた響の手は、おおいかぶさる茉央の頬にふれる直前で、もだえながら止まる。

やがてむなしく空をきった後、それは茉央の両肩へ。


「茉央っ!」


両腕をもちあげて半ば強引に吸い付いた唇を引きはがすと、茉央をみないように顔を伏せたまま立ちあがった。

視界のはしに、ベットから半分起き上がった状態で響を見上げる茉央の影が写りこむ。

血管という血管が、ドクドクと不正に脈を鳴らしては脳内でがなりたてている。


愛してやるなら、骨の髄まで。


狭の言葉が呪いのように、何度も響に訴えかけていた。

茉央が欲しているのは本物の愛なのだ。



「学校遅れるし。お前も早く準備しな」


まるで何にも無かったように、響はいたって自然な振る舞いで茉央の方を振りかえり言った。


「学校いかないよ」

「んじゃあ、兄ちゃんも学校いくのやめる」


『兄ちゃん』響が言えば、茉央の表情が険しくなる。

態度を一変させた兄の様子を伺っているのか、シャムネコのような高貴で強さを持った目が、一度も逸れることなく兄だけを見つめている。


「レオ、どうして俺のキスから逃げたの」


一糸まとわぬ姿で、身体じゅうに見知らぬ男らの刻印を残した茉央がまっすぐに見つめたまま、咎めるように言った。


「俺は、お前の兄ちゃんだから」


どこまでも強い熱視線に、負けそうになる。


「茉央。こういうこと、もうやめよう。ちゃんと、普通の兄弟になろう」

「どうして?どうして急にやめようなんて言うの。今までだって、俺のことを抱いてくれたじゃない」


そういうことじゃないと、ベットの淵に座りなおした響にすかさず茉央がすがりついてくる。




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あきゅろす。
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