愛執染着Rhapsody
純粋培養にも程がある
「…へぇー。……で、『手をつなぐ』のと『軽いキス』はオッケー、ってわけだ」
お昼時のざわついた学食で。
あの後の話し合いがどうなったのか、海里に根ほり葉ほり聞かれた薫ははぐらかすこともできずに、洗いざらい話してしまっていた。
「で、でも、人がいるところでは駄目だって言ったし。…き、キキキキスだって…口は、駄目って…」
「あ、そう。『口は』ねぇ?…ふぅーん」
最後の方はごにょごにょと。
恥ずかしいのか、口をつぐんでしまった薫に、海里は少々呆れていた。
人前っつうかそれ以前に、普通男同士で手なんてつながないし、ましてやキスだなんて。
…ここ日本だし。
完璧流されてるって、何で気づかないわけ?
前々から、何となくではあったがこいつもしや?と疑うような節はあった。
けれども今ほどそれを実感した時はない。
「…お前さぁ、今までに付き合った奴って………あぁ、いないわけね」
聞いた瞬間、顔を真っ赤にしてテーブルに突っ伏した薫。
「う、うるさいなっ。……女の子は大体、格好いい奴にしか興味無いんだよっ」
海里には分かんないだろうけどさっ。
恨めしそうに言われたが、それこそ海里にとっては八つ当たりに近い。
確かに、今まで付き合った相手が一人もいなかったわけではない。
けれどもそれは、顔の作りのせいではないことだけは確かで。
こう言ってはなんだが、海里だって薫に負けないぐらいには平凡顔なのだ。
「それは引っ込み思案な性格の問題だろ…」
「あとは身長とねっ!」
「なんで?薫そんなに低くないだろ」
「175pなんて、平均以上の海里には言われたくない」
いまだに突っ伏したまま、恨めしそうな声が聞こえる。
とうとう拗ねてしまった薫に小さくため息をつきながら、海里は先ほどよりもざわつき始めた学食内に目をやった。
そして。
「…あ」
「野垣?何か辛いことでもあった?」
気づかないうちに、数人の取り巻きを連れた直人が薫の後ろに立っていて。
優しく気遣うような言葉をかけつつ、薫のつむじにキスを落としていた。
2010.10.15〜11.12 拍手小話
加筆・修正してあります。
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