愛執染着Rhapsody
それはまるで純情可憐な
自分の気持ちを自覚してしまったら、もう知らないふりは出来なかった。
いつかのように学食にて。
薫はテーブルに突っ伏しながら海里に泣きついていた。
「…………で、なんでそれを俺に言うかな…」
「だ、だって!こんなの…海里にしか、言えなぃ……」
片ひじをつきげんなりしている幼なじみに、拝み倒して相談にのってもらっている。
いくら周りがざわついていて、誰も他の人のことなんか気にしていないとはいえ。
ここでその話はあんまりよくないんじゃないか?
そんな海里の小さな心配は、薫には届いていない。
彼の頭の中は、今までの直人の言動がぐるぐると回っているのみだ。
つい最近まであたふたしながらも、それをすんなり受け入れていた事が本当に不思議で仕方ない。
「か、考えてみたらさ、毎日のメールとか電話とか……それにそれに、普通やっぱり、手とか繋がないよね!?き、キスとかも…さぁ!?」
がばっと顔をあげた薫は、普段は大人しいのに、今は向かいに座る海里の胸ぐらを掴む勢いだ。
それぐらい動揺しているとも言える。
が、海里にしてみれば何を今更な心境だ。
そんなのずっと前から思ってたけど?
って言うか、まだ付き合ってなかったんだ?
……とは思っていても流石に言わないが。
半泣き気味の薫に、小さなため息をつきながら。
海里はやれやれといった様子で肩をすくめた。
薫がこうなったのには、少なからず自分も関わっているのは間違いない事だし。
これでも大事な幼なじみ。
少々複雑な気もするが、後押しくらいはしなければならないなと海里は思っている。
「自覚したんなら話は早いだろ。ここまできて何が引っかかってるんだよ」
気持ちを伝えて、さっさとくっつけばいいのに。
見ているこっちがじれったくなるくらいだ。
海里の呆れを含んだ問いかけに、薫がぐっと詰まる。
しばらくうーんうーんと逡巡して、ようやく口を開いた。
「…川口くんは背も高くて凄く格好いいし……そりゃ、ちょっとだけ恥ずかしいこともあるけど基本的には優しいし。でも、でもっ……僕はそうでもなくて…普通、だし」
顔を真っ赤にしつつ、ぽつりぽつりと。
本人は凄く悩んでいるのだろう、きっと。
しかし。
「……なにそれ、惚気てんのか」
「ちっ、違うよっ!!」
今時、高校生でも珍しいんじゃないかと思うくらいの乙女思考だった。
2011.1.27〜2.27 拍手小話
加筆・修正してあります。
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