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Short story
雨と猫と





昔よく怒られたんだよ。

最後まで面倒みられるの、って。





でも。

拾っちゃったもんはしょうがない。















土砂降りの雨。
こんなの傘なんて無意味だろと思いつつ、一応はさしてるけど。

当然足元はビチャビチャだな。

近道に公園を突っ切って。

それがいけなかったのか。










「……何やってんの、おまえ」


通り過ぎようとしたベンチにクラスメイトの青木がいるのを見て、ギョッとした。

この雨の中、傘も差さないで座っているから当然ずぶぬれ。
大丈夫かコイツ。


「捨てられ、て…」

「…は?」


ここで声をかけた俺も悪かった。
そして返答に反応した事も。


「猫…捨てられて…て、びしょ濡れ、で…うち、マ…ンション…で」


びしょ濡れはお前じゃないのか。
っていうか、傘はどうした。

ここ、つっこむべき?

ってか、震えて呂律回ってないだろ!


「猫は?」


近づいて傘をさしてやって。

何とか二人、ギリギリか?
いや、俺の背中濡れてるか。
そこまでこの傘大きくないしな。

見上げてくる青白い顔。

どの位、此処にいたんだか。


「どこだよ?」

「…え?」

「ネーコー。とりあえず、連れて帰ってやる。…どこだ?」


ベタだけど、仕方がないだろ。
…弱いんだよ、こういうの。

ここ、と見せられたのはブレザーの中。
恐らく雑種だろう子猫が、震えて俺を見上げていた。

あーあー、もう。


「ウチの母親に、一緒に頼めよ?」


言っとくけど難攻不落だからな。

え、と意味が分かってないような顔の青木の腕をつかんで、無理やり立たせる。


「お前も来るの!…そのままだと風邪引くだろ」










半ば無理矢理引きずって帰って、風呂に放り込んで。
出てきた青木に、ドライヤーで乾かしてやった猫を渡して。

安心したような顔に、何故か俺もほっとして。

思わず手を伸ばした先にあるのは、青木の腕の中で眠る猫か、それとも…。










ピクリと反応した青木ごと、この腕の中に抱き込んでみたら、すとんと答えが落ちてきた。


「あー、なるほどね」


腕の中でじたばたもがくのを、少しだけ力を込めて押さえ込むと、諦めたのか大人しくなった。


「…もう、なんなの」


悪いな、青木。

でも俺、昔から小動物には弱いんだ。
可愛がって甘やかしてやりたくなるんだよ。





この先ずっと、きっと一生。

言われなくても最後まで面倒みるさ。





なんたって、俺が拾ってきたんだもんな。





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