Short story
手紙
手紙をもらった。
俺にじゃない、アキラ宛のもの。
所謂、渡してください、だ。
アキラの親友とも言える立場にいる俺に頼めば、確実だとでも思ったんだろう。
女って、結構したたか。
でも、そうまでする必死な想いは分からなくもないから。
渡すことにしたんだ。
ーーー本当は、嫌だったけど。
とたんにアキラの奴、すごく不機嫌になったんだけど。
俺が何したっていうんだ。
そりゃ……お前がそういう手紙をもらうのが嫌だって知っていて、なのに今まで同じようなこと、何度かしたけど。
悪いとは思っているけど。
でもさ。
お前には分からないだろ?
あの子がこの手紙をどんな気持ちで書いたのか、なんて。
好きで好きで仕方がなくて、でも言えないもどかしい気持ち、なんて。
好きな人へ、他人からの手紙を渡さなきゃいけない俺の気持ち、なんて。
いつの間にか着いたアキラの家の前。
全然しゃべらない俺に苛ついたのか、ちっと舌打ち。
「お前さ…何で俺が怒ってるか、分かってんの?」
だからあれだろ。
俺が手紙を渡したからだろ。
「…全然分かってねぇのな」
「何が…っ」
いきなり腕を捕まれて。
痛いと思う間もなく、目の前には眉間にぎゅっと皺を寄せたアキラの顔。
なんか、すっごくいたたまれない。
突然のことで驚いて、俺の頭は真っ白になっていて何も考えられなかったけど。
でも、アキラが言った言葉だけは、ちゃんと聞こえてた。
「だいたいなぁ………結構きついんだぞ」
大きな溜息を吐いた、その後の台詞。
「ーーーーー好きな奴から、他人の手紙もらうのって」
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