Short story
梅雨
しとしと、しとしと。
朝から窓の外はどんより暗くて、日の光さえその厚い雲に覆われて届かない。
っていうか、雨粒でろくに外の景色も見えなくて。
こんな日は、なぜか憂鬱な気分になってしまう。
……ちょっとだけ、悲しい気持ちに。
雨の続く梅雨は、嫌いだ。
そう言うと、貴方は不思議そうな顔をするけど。
きっと貴方にはわからない。
洗濯物は乾きにくいし、食べ物だって腐りやすい。
それに、くせの強いこの髪は湿気を吸ってまとまってくれないし。
外に出る気もなくなるよ。
「そう、じゃあ俺はこの雨に感謝しないと。……あぁ、そんなに睨まないで」
なにそれ、なんの嫌がらせ?
笑って誤魔化したって許してあげないんだから。
「……だって、それならずっとここに居られるでしょう?この部屋で、二人だけで」
朝起きて、眠りにつくまでずっと。
二人でご飯を作って、二人で食べて。
静かに読書したり、たまってるビデオを二人で見たり。
「一日中、ベッドでイチャイチャするのもいいかもね」
もう!
そんなことばっかり。
だらしなくにやけちゃって、せっかくの格好いい顔が台無しだよ。
―――でも、まぁ。
そういうことなら、梅雨も悪くないかな。
なんて、ちょっとだけ思ったことは………口に出したりはしないけどね。
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