[携帯モード] [URL送信]

Short story
梅雨


しとしと、しとしと。

朝から窓の外はどんより暗くて、日の光さえその厚い雲に覆われて届かない。
っていうか、雨粒でろくに外の景色も見えなくて。

こんな日は、なぜか憂鬱な気分になってしまう。
……ちょっとだけ、悲しい気持ちに。



雨の続く梅雨は、嫌いだ。



そう言うと、貴方は不思議そうな顔をするけど。
きっと貴方にはわからない。

洗濯物は乾きにくいし、食べ物だって腐りやすい。

それに、くせの強いこの髪は湿気を吸ってまとまってくれないし。

外に出る気もなくなるよ。


「そう、じゃあ俺はこの雨に感謝しないと。……あぁ、そんなに睨まないで」


なにそれ、なんの嫌がらせ?
笑って誤魔化したって許してあげないんだから。


「……だって、それならずっとここに居られるでしょう?この部屋で、二人だけで」


朝起きて、眠りにつくまでずっと。

二人でご飯を作って、二人で食べて。
静かに読書したり、たまってるビデオを二人で見たり。


「一日中、ベッドでイチャイチャするのもいいかもね」


もう!
そんなことばっかり。

だらしなくにやけちゃって、せっかくの格好いい顔が台無しだよ。



―――でも、まぁ。
そういうことなら、梅雨も悪くないかな。



なんて、ちょっとだけ思ったことは………口に出したりはしないけどね。



[*前へ][次へ#]

12/16ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!