■夢幻泡影
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『でも,』
『生』
多喜は俺の顔を覗き込んで微笑んだ。
『また生と二人で来れたらいいな』
『………うん』
最後まで俺に夢を見させてくれる。ふわふわ空を飛ぶんじゃなくて,浮かんでるような気分にさせてくれる。
『それじゃ,またねー』
ヒラヒラと手を振って多喜は帰ってく。俺もそれに倣って振り返して,そのまま空を仰ぎ見た。
さっきの一番星を必死になって探してみたけど,見えなかった。いや,見えてても探せないんだ。沢山ある中の一つになってしまって。
その時は唯一でも,時間が過ぎれば漠然としたものに身を窶す。まるで,今の俺の様。
『ハハ…見えないや』
乾いた笑い声をあげたら,頬に雨が落ちた。しょっぱい雨が後から後から零れ落ちてきた。
はらはらはら。込み上げる想いは,涙に変わって流れていく。
■■
1コールで繋がる俺たちは,時間制の恋愛を形だけで楽しむ。
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