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小説
少年
※※
クラウドとザックスの出会い。
全ての始まり。
※※



少年はそこに立ち尽くしていた。

ここはミッドガル。
魔光と機械が発達した街。
首を背中に付くまで見上げなければ、全体が見えないくらい高い高層の建物が立ち並ぶ。
だがミッドガルをピザのように円で取り囲む壁は、まるで廃退的で都会の華やかさを感じさせない。
ミッドガル。地に這いつくばる名に相応しい。

だが、その中央にそびえ立つ建造物。

「神羅カンパニー・・・」

少年は思わず呟いた。

神羅カンパニー。それがミッドガルの中央にそびえ立つ建造物の名である。
今や世界に知らぬものはいない企業である。
武器の輸入や魔光エネルギーの商品活用などをウリにしている企業であるが。
それよりも名をとどろかせているものが、神羅にはあった。
そして少年はそれを目的に、故郷から1人やってきたのである。

「どうしよう。まずは何処に行けばいいんだ?
あの建物までの道を聞いておけばよかった」

道も分からず、とにかく歩く。
都会と聞いていたのに、歩く道はガラクタばかりが蔓延っていてイメージとは違う。
すれ違う人は下を向いて歩き、ガラクタの中から何かを探し出そうと必死だ。
いわゆるスラム街なのだと理解した。

すれ違う人の1人に声をかけてみる。
「あの、すみません。神羅カンパニーに行くにはどうすればいいですか?」

少し痩せ型の中年男であった。
声をかけた少年を胡散臭げに見る。
あまりにもジロジロと見られるので、さすがに少年も良い感じはしない。

「あの、やっぱりいいです。すみませんでした」
早口にそう言ってその場を離れようとした。

「このスラムの商店街を抜けた先にプラットフォームがある。そこで列車に乗りゃあ、すぐだ」
ぶっきらぼうに中年男は教えてくれた。

「あ、ありがとうございます」
少年は首だけで礼をしながら、教えてもらった方向へ早足で歩き出した。

少年の後ろ姿を中年男はしばらく見つめていた。




ガラクタの道を抜けた先に大きな扉で守られた商店街が見えた。
力を込めて扉を押し、街へ入る。
商店街といっても個人が細々と経営しているようで、キャンピングカーを改装して露天商をしていたり、住宅の軒先を窓口にしているような店ばかりであった。

「たしか、この先にプラットフォームがあるんだったな」

露天商の売り物を横目で見ながら、プラットフォームへ続く道を目指す。

ふと気づくと、目の前にガラの悪い若者が数人たむろしていた。
嫌な予感を感じながらも、列車に乗れば目的地へ着けるという気持ちで若者達の脇を通り抜けようとした。

「おい、ガキ」

やはり。
こうなる予感はしていた。
そして、それはあまりよろしくない状況になるであろうとも。

目線をあげ、少年よりも随分と高い背の若者の1人を見つめた。

「なに?俺、急いでるんだ」
少し警戒しつつ言い放つ。

ニヤニヤとしながら、若者が少年へと近づく。
「どこ行くの?ここ、通りたいの?」

まるで子供をあやすかのような猫なで声で少年に話しかける。
たしかに少年は、同年代と比べると背が低い。それはそのまま少年のコンプレックスとなっていた。
そして少年のもう一つの特徴。

「男の子?それとも女の子かなあ?綺麗な金髪だよね。地毛?」

ピクリとコメカミ辺りが動く。

少年のもう一つの特徴。それは見事なまでの金髪と、女のような、どこか中性を思わせる整った顔立ちであった。
まだ幼いが、歳を重ねる毎に、男女から共に目を引く存在となることが予想出来る。

「俺は女じゃない。男だ。用がそれだけなら退いてくれ」

まだ13か14の年頃の少年にすごまれた所で、若者達は引かない。

「金さえ払えば通してやるよ?あるだろ、金。ここまで1人で来たんだ。出しな」
最後の方は猫なで声を消し脅すかのような声色だった。

「嫌だね。とにかくそこを通せ!」
少年は元来負けん気が強かった。声を張って引く気がないことを示す。
だが、やはりまだ少年は幼かった。
喧嘩になったら力は敵わないだろう。殴られたら痛いだろうなという思いが頭をチラつく。
チカラを込めて丸めた拳が震えてくる。

ーーー怖いーーー

「金がないなら作ればいいよなあ?」
「?」
若者達の言っている意味を理解しかねた。

「だから、カラダを売ればお金になるでしょー?」
途端にゲラゲラと下品な笑い声が響き渡る。

全く理解できない。なぜカラダを売ることが金になるのか。

本当に理解出来ていない少年を見て、1人の若者が腕を強く掴んだ。

「離せよっ!やめろ!」
「黙れ」

頬が一瞬で熱く燃えた気がした。
頬を叩かれたのを理解するには時間がかかった。

「大人しくしてりゃ、痛いこともないから。な?黙ってついてきな」
またも猫なで声で、少年をたしなめるように話しかける。

イライラする。悔しい。目的地はすぐそこなのに。弱い自分にムカつく。

「嫌だ!俺は神羅に用があるんだ。離せっーーー」

大声で少年が叫んだ。

「おいおい。売春斡旋は犯罪だぜ?捕まりたいんですかー?」

突然、別の男の声が少年達の頭上から響く。

「だ、だれだ?!」

「おりゃ」
声と共に、積み上げた瓦礫の上から黒い影が舞い降りてきた。

ドスっと重たい音がする。

「さ、俺が来たから安心しな、おじょーちゃん」

「・・・おじょ・・・」
少年は自分がそう呼ばれたことに、またも苛立つ。

若者達は突然の乱入者に野次を飛ばそうとした。
が。

「お、お前、その格好、ソルジャーか?!」

少年は若者達の発言にハッとした。
そして男を見上げた。
ソルジャーと呼ばれた男は、艶のある黒髪を肩まで伸ばし、前髪を後ろへと撫でつけていた。意志の強そうな眉、高い鼻、そして、青緑色の美しい瞳をした偉丈夫であった。
少年とは違う、男らしく整った顔であった。そして180はあろうかという身長の持ち主であった。

「おっ。よく分かったな。やっぱ俺有名人?いやあ、照れるなあ」
どこまでが本気なのか分からない。少年と若者達はソルジャーの男を警戒する。

「この子をどっかイケナイ場所に売ろうとするなら、俺が相手してやるよ?どうする?一応、俺ソルジャーなんだけど」

男の発言に若者達はグッと息を飲む。
一瞬の躊躇後、逃げるように消えた。

「そうそう。素直が1番」
ウンウンと1人芝居がかった様に、少年はお礼を言うのも忘れ男を見た。

その少年の視線に気づき、男は少年に近づいてきた。
「大丈夫か。怪我は?」

「あ、ありがとうございます!助かりました」
やっと声をだせた。
お礼を言うのも精一杯だ。
しかし、助けてもらってなんだが。

「あの、俺はおジョーちゃんじゃない。俺は男です」
そこはキチンと正しておかねばならない。少年のプライドだ。

「あ、わりぃ。あんまり綺麗な顔してっから。そうだな。ちゃんと見たら、意志の強い男の顔だ。成長したらもっと良い男になる顔だ」

少年は固まる。今までそんなこと言われたことがなかったからだ。
いつも故郷では女顔をバカにされていた。
きちんと男として、顔を、そして己の意志を認めてくれた発言をした人間は、彼が初めてだった。
嬉しい。素直にそう感じた。

「俺はザックス。さっきも言ったけど一応ソルジャーだ。よろしく。お前は?」

ーーーソルジャー

少年はじっとザックスと名乗る男を見ると口を開けた。

「俺はクラウド。クラウド・ストライフ。さっきは本当にありがとう」

「クラウドか。うん、クラウド。お前どこかに行こうとしてたのか?なんなら送ってやるよ」

クラウドは勢いよく顔をあげ、ザックスの腕を強く握った。

「俺っ!ソルジャーになりに来たんだ!!」

クラウドは大きな声でザックスに告げた。



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あきゅろす。
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