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小説
可能性の排除
※※※
ザックスとシスネの会話
セフィクラです
※※※


「ザックスは彼女いないの?」

シスネが唐突に言うものだから、俺は何の事か分からなかった。
彼女?

「あ、あのー。一体何でそんな話になるのかなー?」

少し誤魔化しながら、軽い調子で返す。
だがシスネは構う事なく聞いてきた。

「だから、彼女よ彼女。
一人位居るでしょ、ソルジャーなんだし。仮にも」

最後の一言にカチンときたが、まあそこは許そう。
俺は心が広いからな。

「てか、何で聞きたがるの?
・・・あ、もしかしてシス・」

「ストップ。違う、全然違うから安心して」

シスネがザックスの言葉を遮り迷いもなく否定する。

「ひでー。まだ全部言ってないだろ。
女の子にそんな事聞かれたら、誰だってその考えに行き着くだろうよ」

グラスが空になったので、店員にお代わりを注文する。
シスネも同じく注文し、更にツマミになるものも頼んだ。

店員が注文をとり、その場を去ってからまた先ほどの会話に戻る。

「うーん、彼女はいないよ。
んー、と。うーむ」

ザックスが腕組みをし、眉を寄せハッキリしない言葉を口にした。

「何よ。彼女じゃなくても気になる子はいるみたいね、その調子じゃ」

口元を少し緩め、クスクスとシスネは微笑う。
シスネは笑うと可愛い。
前髪をキチンと揃えしっかりとした顔つきだが、横髪はウェーブが緩くかかり女性らしい。
そのアンバランス感が彼女の魅力だ。
ハッキリと物事を言うので、ザックスは彼女を気に入っていた。2人で居酒屋に酒を飲みにくる程に。

「いやあ。まだ数回会ったばかりなんだ。
でもすごく良い子」

目を細め、その“良い子”を思い出しているのだろう。
端整な顔はだらしなく弛む。

調度そこへ先ほど注文した酒とツマミが配膳された。
店員が軽く頭を下げ、ごゆっくり、と言い去って行った。

「私たちの関係が何に見えるのかしらね」

去った店員の方向を軽く見ながら、意地悪く笑う。

「みーんな、頭固いよな。
友達なら男も女も関係ないじゃん。
好きなら尚更だろ。嫌な価値観が多すぎ」

酒を一口飲み、吐き出しながらザックスは呟く。

「誰もがそうでないように、考え方もそうなのよ」

「なになに?悟っちゃってる感じ?」

前のめりに顔を近づけ、面白そうにシスネの顔を覗き込む。

「ううん。ただ、なかなか自由に生きられないものなんだな、って。
自由は理想だけど、きっとどこかで誰かに迷惑をかけてる。
でもだからって縛られるのも嫌」

睫毛を伏せグラスに口をつけたまま、シスネは吐露した。

「・・・うん。何かわかる気がする。
ほんと、我儘だよな俺ら人間ってさ。
だって自分が一番好きなんだもんな。
だから悩むんだ」

気分が沈んでいたシスネを、ザックスがいつもの軽い口調で助ける。
だからかもしれない。
シスネがザックスといるのは。
彼はいつでも助けてくれる。
この沈んだ心を。
それに甘えてばかりはいけないと思いながらも、シスネはザックスに連絡をとる。
タークスという一種の特異な仕事の為か、心は知らずの内に澱が落ちてくる。
それを何処かで振り払わなければ、この仕事はやって行けないのだろう。

「・・・あの坊やは大丈夫かしら」

「シスネ、お前・・・」

そう。
こちらが本題だったのだ。
あの坊や。
一年ほど前に、一般兵へ配属された少年。
ークラウド・ストライフー

「クラウドなら大丈夫だって。
まだ何も起きてないしさ」

「だからよ。
これから起き得る可能性がある人物だわ」

先ほどの穏やかな顔とは違い、瞳は真剣だった。
タークスの時の彼女の眼だった。

「あの坊やと英雄さんは、出会ってはいけなかったのかもね・・・」

セフィロス。
神羅のソルジャーで英雄。
そして・・・

「そんな事言うなよ。
出会っちゃいけないなんて、誰が決めていい訳ない!」

思わず大声になるザックスの口元をしっ、と人差し指で押さえシスネは続けた。

「これはね、神羅全体を考慮して言ってるの。あの2人の関係を否定してるつもりはないわ。
ただあの2人は、今や重要人物で危険人物なのよ」

「危険って・・・」

急に力が抜けて、座っていた椅子にもたれた。
クラウドが危険人物。
確かにあのセフィロスとの関係は、あまり公に出来るものではない。
だからといって、2人の関係を壊す事は間違っている。人の気持ちとしては。
しかし、シスネの言うように神羅として考えたら。
セフィロスに近づく危険因子なのだろう。
あの英雄が、特定の人間の為に存在してしまったら。
その人物が英雄を変えてしまったなら。

「・・・なんで、簡単に生きられないんだろうな。
英雄だって人間だ・・・」

「今、神羅は大きな危機を迎えてる。
ジェネシスとアンジールの離反。ホランダーの行方。
その上セフィロスに何かが起こったら、もう手に負えないわ。
今は、英雄には英雄でいてもらわなければ困るのよ」

セフィロスとクラウド。
この2人が神羅に何か起こすとはザックスには考えにくかった。
特にクラウドは。
ただセフィロスに憧れ、ソルジャーに憧れ故郷を旅立った少年だ。

「ま、いいや。
“今”は何も起きてないんだし。
今日はもっと楽しい酒を飲もうぜ、な?シスネ」

困った顔をしてザックスはシスネに言う。
シスネは少し躊躇ったが、そうね、と笑った。

「ごめんなさい、ザックス。
私が切り出した話のせいでお酒が不味くなったわね。
ええ、この話はおしまいね」

「ここは俺が奢るからさ。
好き酒頼みな」

「安酒しかないけどね」

そのまま2人は、店が閉まる時間まで飲み明かした。





「セフィロス!」

少年の姿が深夜のソルジャーフロアにあった。

「今日はもう仕事は終わり?」

セフィロスに駆け寄り顔を上げ尋ねる。

「ああ。お前はなにをしていたんだ?」

「トレーニングルームを借りてた。セフィロスに会えるかなって切り上げてきたんだ」

そう言う少年の首筋は汗で濡れていた。
息が少しあがっているのは走ってきたせいだろうか。
深夜のソルジャーフロアは薄明かりで、少年の顔をぼんやりと映し出す。

「汗が気持ち悪いだろう。
部屋に来るか?シャワーを使え」

セフィロスがついて来いと少年の肩を抱く。
少年はビクリとしたが、すぐに力を抜き素直に従った。
歩きながらセフィロスが下を見ると、黄色の癖毛の髪がピョコピョコ跳ねて、まるでチョコボの様だった。
クスクスと笑い、少年が怪訝な顔をセフィロスに向ける。

悪い、とその柔らかい髪を撫で、そのままエレベーターに向かい2人は消えていった。


END
2012.3.5

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