願わくば一つの愛を…。
3
なんでそこで馬鹿ってなるんだと思い抵抗をしたら見事母さんと羅紀に「馬鹿だろ?(じゃん)と帰された。
うぅ、酷い
いくら本当のことだからってそんなハッキリと。
「でも、母さん。気分ってことは旅行かなんか?」
「何が?」
「いや、だから海外に行く件」
俺はパンの耳を器用に千切りながら羅紀に尋ね
皿にさりげなく置くと、母さんに後ろから叩かれた
それを見た羅紀は苦笑し、耳を食べてくれた。
俺は昔からパンの耳はどうも嫌いでパンの耳を千切って真ん中だけ食べる癖がある。
母さんはちゃんと食べろよと言うが羅紀は仕方ないかと食べてくれる。
どっちが上だがわかんない。
「海外には旅行じゃないって、暮らすんだって…」
「へぇ〜……って、えぇぇえ!?暮らすの!!?」
普通に聞き逃すところだった。
なんでそんな急に…。
おかげで口に入ってたパンのカスが飛んで羅紀に怒られたよ!
てっきり、仕事じゃないなら、旅行かと思ってたの暮らすなんて…。
しかも、気分で…。
恐るべし、我が家のお母様
「よくそんなお金…。」
「まぁ、さっきは仕事じゃないとは言ったが結局は仕事だよな。仕事がうまくいって、相手の方からオファーが来たんだよ。」
「それを引き受けたんだ?」
「いや、即答断った。」
えぇ!?
今の話の流れならそうでしょ?
「なんで断ったの?」
「俺もそれ言った。」
羅紀がせっかくのチャンスなのにと呟くのを聞き俺も深く頷いた。
「そりゃ、今はな?だけどいつ失敗するかも分からない。ましては海外なんて成功したら、そりゃバラ色の人生だが、失敗したら大変だろ?だから断った。」
「「なるほど」」
これにはさすがに俺も羅紀も正論なだけに何も言えなかった。
何だかんだ言ってちゃんと考えてたのね。
「なら、なんで?」
「あぁ?そりゃ相手がしつこいからどうしてもと言うなら金出せやって言ったら…。」
「「言ったら?」
「出た」
ウソー!!?
どんだけなのその相手は
「うちもビックリしたよ。さすがに冗談で言ったら本当に金出したからな……。だからとは言わないが代わりに仕事を引き受けることにしたんだよ。」
「でも、それって大丈夫なの?話がうますぎない?」
羅紀の言葉に俺も不安げに母さんを見ると母さんはケラケラと笑い
「大丈夫大丈夫。そこら辺は抜かりなくしてっから、もしアイツがうちを騙そうものなら後が怖いってアイツは知ってるしな」
「アイツ??」
「その相手ってのはうちの高校時の後輩なんだよ。」
なるほど…。
というか時々思うが母さんの人脈って幅広いな
というか、後が怖いって…。
想像したくないのは俺だけか?
「あ!でも俺、櫻成高校のもん何も持ってないよ?今から揃えられる?」
そう、てっきり菱島高校に入学すると思ってたから制服、鞄も全てそちらのだ。
櫻成高校の物なんて何も持ってない。
「それなら心配ない。」
そう言って母さんはいつの間に頼んだのか俺の目の前にドンッと鞄やら何やらを置いた。
「これ、どうしたの?」
俺が何も言えずにいると羅紀が鞄を掴み母さんに尋ねると母さんは鞄の中から封筒を出し
「何だが知らないが理事長からのプレゼントだと…」
その瞬間、ほぼ同時に「プレゼント?」と首を傾げる俺と羅紀を見て母さんは持っていた封筒を俺に見せてくれた。
内容はどこにでもある言葉に学校についての間接な説明
とても綺麗な文字で…?
ん?これ自筆か?
今時珍しいというか何と言うか…
律儀な人なのかな?
「わざわざ自筆なんて律儀な人だよね?」
「普通はしないけどな」
「そうなの?」
自分で「ない」と言いながら「知らん」と返す母さんに若干苛立ちを感じつつ大切にしまっといた
封筒の一番最後の行にとても大切なことが書いてあったのを気付かず…。
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