願わくば一つの愛を…。 2 「お前に言ったところで忘れるだろ?第一、急だったんだから仕方ないだろ?」 「そりゃそうだけど…。」 なんだろ…。 なんかうまく丸み込まれてる気が…。 「じゃ、急に仕事で行くことになったんだ?」 「いや、全然」 ………。 「今、なんと?」 「だから、仕事じゃない。」 「仕事じゃなかったら理由は?」 「気分」 ………。 うん…。 本当に俺は全力でこの時母さんの息子であることやめたいと思ったよ。 気分で海外行きたいってどんだけなの? というか、うちにそんだけの金あったか?? ないよね!? それとも、ヘソクリか? 「たくっ!本当にウダウダと男のクセにねちっこい!」 そう言っていきなり母さんに後頭部を叩かれた。 なんか理不尽じゃない? 俺悪くないよね? 「お前がねちねちしてるからだ! 腰に左手を置き右手はビシッと人差し指で俺を指差す母さん あのね…。だから話を聞いてないんだってば!と言いたいが母さんにそんなこと言ったら俺は生きて帰れないので黙って聞く 「それともなんだ?お前はうちが決めた事に文句あんのか?」 「ないない。ぜんぜーんありません!」 母さんの目が変わった! 変わったよ! というか頷く他ない! 「でも、なんでわざわざ高校変える必要あんの?」 「安いから」 「はっ?」 今、何を言ったのかしら? 「だから安いから」 「えっ〜と。主語を」 「…お前普通わかるだろ?」 「わかんないよ!」 「はぁ〜」 何がはぁ〜だよっ! はぁ〜って溜息つきたいのはこっちだよ! 母さんは呆れた表情で俺に説明をしてくれた。 どうやら母さんの知り合いにそこの高校の教師をしている人が居るらしく 色々と相談したら、理事長にまで話してくれたらしく そしたら、事情を知った理事長が特待生扱いとして俺を迎えてくれるという。 うん、なんか…。 大変な事に…。 なんで高校行くのにこんな大変事になるんだろうか? ん?待てよ? そしたら、羅紀はどうなるんだ? 愛しい弟を一人置いてく事になるぞ? いいのか?それで? そんな事考えていたら、俺の考えてる事を理解した母さんがいいんだよと手をひらひらさせ羅紀も既に了承済みだと言い出した。 「本当に?」 「うん、俺はその方がいいし」 「なら、いいんだけどさ…」 まだ、ウダウダと言う俺に母さんは次第に顔つきが変わり額に青筋を立て出した。 …数分後―。 「…だから、黙って頷いとけばいいのに…」 今、まさに母と息子の戦い 母さんは俺にコブラツイストをかけている 幾つ歳取っても変わらない光景に羅紀は呆れ溜息をついた。 「ギッギブ…ギブゥゥ」 「ったく…だらしない」 俺はやっと解放され床に手をついてむせ返りながら息を目一杯吸う 「どこの家族にいきなりエルボを掛けてコブラツイストを掛けようとすんだよ」 「うち」 「母さん」 「あっそうですね…」 俺の言葉にさも当たり前の様に言う母さんと羅紀 本当に我が家は普通の家庭から離れてます。 「でも、兄さん心配だな〜」 肩肘ついて言う羅紀 「何が?」 「兄さんってこんなだし、狙われそう…」 どっからか持って来たのか、櫻成高校と書いてある。 パンフレットをペラペラとめくりながら言う羅紀に俺は大丈夫だよ。と笑った。 すると、羅紀は膨大な溜息をつき軽く睨みぶつぶつ言い出した。 なんか、難しい時期だな…。 「母さんもよりによってなんで男子校な訳?」 「あぁ?いいんじゃないか?いい経験だよ。」 羅紀が文句を母さんに言うが肝心の母さんはまったく相手せず、はいはいと交わされてる。 俺は櫻成高校のパンフレットを見ながら何もそこまで心配しなくても俺はちゃんと通えるし、中退なんかはしないのにな…と思った。 確かに、櫻成高校へはわりと距離があるがたいしたことない 特待生ってことで虐めを受けるのを心配してるならそれこそ大丈夫だ。 「羅紀は少し心配性過ぎるんだよ。もう決まっちゃったことだし、ちゃんと通えるよ?」 俺の言葉を聞いた瞬間、再び溜息つく羅紀 俺ってそんなに信用ないのかしら? 「もう、いいや。兄さんに何言っても無駄だし」 「馬鹿だしな」 「馬鹿じゃない!」 [*前へ][次へ#] [戻る] |