願わくば一つの愛を…。
4
「…羅、……聖羅…起きてよ!起きろっ!!」
「のわぁぁあ!」
次の瞬間、頭に物凄い激痛と逆さまに移る我が愛しの弟君の眩しい笑顔だった。
「まったく…本当に俺が居て良かったよ…」
深い溜息をついて呆れた表情でこちらを見る羅紀に俺はごめんね。と謝り、羅紀の頭を優しく撫でてお礼を告げた。
いつまで経っても可愛いもんだ
「何ニヤついてんの?」
「ほぇ?」
「聞いてた?俺の話」
「……なんだっけ?」
俺が話を聞いてないと分かった瞬間、羅紀は満面の笑みで微笑み出した。
アハハ、本当に怖い
我が弟に逆らえない兄
昔から変わりません
「だからね、櫻成高校は全寮制男子校なの!」
「だから?」
「…危ないの!!」
「何が?」
「本当に貴方馬鹿ですか?」
突然真顔で兄を馬鹿にする我が愛しの弟・羅紀君
お兄ちゃんに馬鹿と言わんでくれ…
事実だから…悲しいの
「あのね、馬鹿なのは分かってるから言わないでくれる?」
「あぁそうだったね自覚あるお馬鹿さんだよね♪」
また眩しい笑顔でそんなこと言う
最近毒舌に磨きがかかったかな?
「いい?聖羅は自分に疎いからわかんないだろうけど聖羅は何処からどう見ても狙われる」
「何に?」
その瞬間、バシッと頭を叩かれた。
いやいや、俺は悪くないよ?
むしろ、羅紀の主語に問題があるんだよ!
「主語言ってよ、主語」
「だから、周りの野獣共に狙われるって言ってんの!」
「んな馬鹿な…俺男だよ?」
羅紀みたいに綺麗な顔立ちしてる訳じゃないし
まぁ、確かによく女の子に間違えられるがそれは体格やら声やらある訳で
男子校と分かってる以上狙われるっていうのはないと思うが…
「何その不満そうな顔」
「だってさ、男子校なんだから女子は居ないでしょ?」
「………。」
なんでそんな冷たい目でこっちを見る
俺は何も悪いことは言ってないぞ!
「…なんでそんな顔するんだよ。」
「もう、いいよ。なんか一生懸命言ったって聖羅には分かりそうにないし」
なんかめっちゃ馬鹿にされた気がする…。
「いい?何かある前に電話してよ?」
「何かある前?」
「聖羅はワンテンポ、ツーテンポそれどころか5も遅れてるから心配なの!」
「アイタッ!!」
羅紀は俺が真面目に話を聞いてないとわかり、あろう事か分厚い参考書の角で頭を叩いた。
心配してるならもうちょっと違うやり方があるはずなのに随分と乱暴だなと、頭を摩ってると、再度分かった?と、聞かれまた叩かれたくないからとりあえず頷いといた
「本当に羅紀は心配性だな。大丈夫なのに」
「大丈夫じゃないから言ってんの!そろそろ出た方がいいんじゃない?」
羅紀に言われ時計を見ると確かにそろそろ出といた方が色々と楽だ。
「いい?ちゃんとさっき話したこと守るんだよ?」
まるで母親のような言い方につい笑って「はいはい」と、返事を返したら「はい」は 一回と怒られた。
本当に母さんより母親らしい羅紀に行ってきますと伝え家を出た。
この時まだ俺は羅紀の言った本当の意味を知らないでいた。
あの時、羅紀の話をちゃんと聞いてればと後悔するのはだいぶ後のこと
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