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小説
第一話
「はぁぁぁ!!」
雄叫びとともに、少年は地面を蹴った。
凄まじいスピードで、相手に剣を振りきる。
だが、相手も紙一重の差で攻撃を避ける。
少年は姿が見えなくなると、直ぐさま後ろに振り返る。
「敵の居場所も見つけられねぇか?」
背後から声とともに、肺目掛けて殴られルアンは吹っ飛ぶ。
「か・・・くぁ」
肺へダメージを喰らったため、息が出来ない。
「おいおい、倒れるなよ?ルアン!!」
朦朧とした目で相手の攻撃を見ていた。
真っ直ぐと顔面へ振り下ろされる剣を冷静に・・。
ーガキィン
甲高い音が辺りに響く。
「受け止めるか・・」
「兄さんこそ、手を抜いてますね」
「弟苛めは、後味悪りぃよ」
ルアンは、兄の剣をはじき返す。
「!!」
もう、兄の手に剣は残っていなかった。
「気を抜いた方が負け、俺の勝ちです」
ルアンは兄の首筋に剣先をあてる。
「参りました」
苦笑いでいう。
「ふぅ」
ルアンは、手の甲で汗を拭いながら、近くの階段に座り込む。
すると、向こうからやって来る気配に気づいた。
自然と笑みがこぼれる。
「リアラ!!」
立ち上がり、側に駆け寄る。
「ルアン」
「君が稽古場に来るなんて珍しいね」
「そう?あなたが気づかないだけで、何回も来ているのよ」
リアラは、嬉しそうな顔でルアンの顔を覗き込む。
「私は、あなたに気づかれづに来られた。たった一人の女ね」
リアラの嬉しそうな笑顔にまた、笑みがこぼれる。
「あのね、今からお城でお茶会があるの。一緒に行かない?」
「俺で良ければ、よろこんで」
二人は、急いで支度すると馬車に乗り込んだ。
「いってらっしゃいませ」
メイドの声とともに、馬車が動く。

「今日は、リアラ嬢と、サーシャ嬢が来るんだな」
宝石を散りばめた服に身を纏った貴族の男が言う。
「サーシャ嬢の気の強さと、美しさは国で一番だな」
「いや、リアラ嬢の気品と、美しさ、歌声に勝る者はいないよ」
他の男たちも、今日くる令嬢の話で盛り上がる。
「一体、何のお話し?」
よく通る声が男たちの話を中断させた。
「これはこれは、サーシャ嬢」
一人の男がサーシャの手に口付ける。
「ふっ。そろいに揃って、令嬢の品評会・・というところかしら?」
男たちは口を紡ぐ。
「図星?」
男たちはサーシャから、目を逸らした。
「そんなに虐めるな、サーシャ」
「シャマル王子・・・。虐めてなどいないわ。ただ、女を比べるなんて最低な男がいるのかと、思っただけ」
サーシャは、髪先を巻き上げた髪を耳に掛ける。
「そうだな・・・。最低・・だな。ん?これは、リアラ嬢!」
「御機嫌よう、シャマル王子」
リアラは、一礼する。
「頭をあげよ。?、そちらは」
「申し遅れました。俺は、ルアン・エルトリオと言います」
ルアンの名前を聞いて、貴族たちの目つきが変わる。
エルトリオ家・・・。又の名を『剣の一族』別名『竜の一族』
その名の通り、剣で戦い、使い魔の竜とともに戦う一族。主に忠誠を誓い、主が生涯を終えるまで守り抜く。剣の一族の力を使い、王にまで地位を上げた者もいる。だが、剣の一族の主は決まっておらず、心に決めた者を主とする。
ー剣の一族・・・。面白い奴と出会ったな。
シャマルが、
そう思っているなんて誰も知らずに、お茶会は盛り上がり、やがてお開きになった。
「エルトリオ卿」
シャマルに呼び止められ、振り返る。
ルアンはリアラに待つよう言ってから、シャマルについって行った。
薄暗い、あまり人が通らない廊下に着くと、シャマルはこちらを向いて壁に背を預ける。
「お前、俺の元に来ないか?」
「貴公と、あまり面識が有りませんので」
シャマルは、ルアンへ歩み寄る。
「俺の誘いを断るか?」
「断ってはいません。ただ、貴方に仕える理由がありません」
「そうか・・・」
シャマルは、ルアンの瞳を見て困った様にこちらを見る。
「主は、リアラ嬢・・か?」
「どうでしょう」
シャマルの金色の髪と青い瞳が暗闇でも映える
「俺はこれで」
ルアンは、シャマルに一礼すると背を向けて歩き出した。
シャマルはルアンの背を見つつ、前髪を掻き上げて呟く。
「手に入れるさ・・・。やっと見つけた、俺の光なんだからな・・・」







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あきゅろす。
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