32 目覚めたらクリスマス。当たり前のことだけれどクリスマスだった。広間には巨大なツリーが飾り付けられていつもの長いテーブルはきれいに片付けられて、広くスペースがとってある。ベッド脇に高く積まれたプレゼントの山のなかにルシウス先輩の名前はなくて少しガッカリ、というかやっぱりフラれるんじゃないだろうか、とか色々。それでもなんとかテンションを保つためにいつもの数倍気合いをいれてオシャレしてパーティーの時間を迎えた。 「きんちょう、する」 「がんばってなまえ!何があっても私がついてるわ!」 「緊張なんてなまえらしくないなぁ。気楽にいこうよ」 「気持ちはきちんと伝えたほうがいいよ」 リリーとジェームズとリーマスが私を囲って応援してくれる。すごい嬉しいんだけど、なんだかこれから自分がとんでもないことをやらかすんじゃないかという不安にもかられて忙しい。人生で初めての告白、だ。 ふとソファーに座って真剣な表情をしているシリウスの横顔が目に入って来る。 「…」 「…シリウス?」 「ん?なんだよ」 「いや、なんか真剣だからどうかしたのかなって」 「お前は俺より自分の心配しろよ」 話しかければいつもの笑顔になって、いや悪魔の笑顔と呼んでも差し支えのないくらいの笑顔でそんなことを言ってくる。全くもってそのとおりだな。どう転んだってこれで最後になる、としか思えないのが現状だけど。どちらにしろルシウス先輩の隣に立てるのがこれで最後ならばやるしかないんだ。いざ広間へ向かって歩いていく途中でシリウスもリーマスも約束したパートナーを見付けて離脱してしまった。残ったリリーとジェームズも私の視界にルシウス先輩が入ったときにすぅと人混みに紛れていってしまう。緊張して固まる私に気付いた先輩は小さく微笑んで名前を呼んでくれた。 「なまえ」 「遅れてすみません」 「気にするな。今来たところだ」 いつものプラチナ・ブロンドを細い黒いリボンで低い位置でひとつに束ねて、見るからに周囲とは違った高級そうな服を身に纏いしかもそれをさらりと着こなすルシウス先輩は周りからの視線をその一身に受けていた。そんな視線に圧されることなくいつもどおり振る舞うことが出来るのはやっぱりルシウス先輩のすごいところ。 「すごい注目度だな」 「そうですね…」 「こんなことではゆっくり話も出来ん」 チッとルシウス先輩が舌打ちをしたのを私は聞き逃さなかった。これだけの視線に臆することなく舌打ちできるその度胸、さすがあのスリザリンを牛耳っているルシウス先輩。変なところに感心する私に右手を差し出すと舌打ちとは打って変わった穏やかな笑顔で口を開く。 「一曲お相手願えますか?」 「喜んで」 ←→ |