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「噂の猫か」
「!」
リーマスが折角部屋からわざわざ持ってきてかぶせてくれた帽子を後ろから取られた。こんなひどい事をするのはシリウスだけ、と思っていたのにまさかのそれはルシウス先輩だった、嫌な予感しかしない。
「返してくださいよー…」
「何故だ?」
「恥ずかしいからです…」
ルシウス先輩は私の手の届かないところまで帽子をひょいとあげてしまうから、背伸びも虚しくそれもまた恥ずかしいだけ。自分の猫耳がしょんぼりとうな垂れるのが分かった。はぁ、よりによって1人でいる時にこの人。いじめられるに違いない。
「耳が四つで倍に聞こえるのか?」
「え?そんなことは…っ」
ないですよ、という言葉を遮られた、否、言葉にならなくさせられた、という方が正しい。ルシウス先輩は相変わらず平然とした態度なのに、私の猫耳にふうと息を吹きかけた。何してるんですか、変態…顔が赤くなっている、と言われて、逃げようとしたら今度は尻尾を掴まれた。もうこの身体不便すぎ!
「嫌がる割に尻尾は振るとはな」
「う…」
「感度は猫と同じなのか?それともなまえのまま?」
「や、やめてくださいぃ…」
ルシウス先輩は強引に私の顎を掴んで顔を振り向かせると、そのまま私の顎に指を滑らせた。その小馬鹿にしたような笑みとは裏腹に猫を撫でるような優しい手つき。そのギャップにぞわつきながらも、身体はやっぱり素直なのか耳がぴんと立つらしい。
「スリザリンで飼ってやろう」
「嫌です、死んでも嫌です」
「そうか、では私の自室で」
「…もっと嫌です」
「他の男にこんなに優しく撫でられたか?」
「…そ、それは…正直ないですけど…」
「ただの人間に戻っても可愛がってやる、心配するな」
「もう、からかわないでください!ルシウス先輩のそういうとこ嫌いです!」
ルシウス先輩の手を振り払い、油断していた先輩の手から帽子を奪い取って廊下を走る。最悪最悪、嫌いなのにときめいちゃうからルシウス先輩は大嫌い!私の事なんてなんとも思ってないくせに、からかってるだけのくせにさっ。
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