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「…ルシウス、先輩…」
「…」
寝言か。これで名前を呼ばれるのは三度目だ。なまえが昼休みに倒れて、五時間ほどが経過していた。夕食も終わったし消灯時間まではここにいようと思い、彼女のベッドの横で読書をしている。
「ミスターマルフォイ、あと一時間で消灯時間ですよ」
「わかりました」
彼女の頭にはここ何日かあった猫耳がなくなっていて少し見慣れない。自業自得とはいえ耳に振り回された数日だっただろう、と振り返る。なまえ、と名前を呼びながら幾分か撫でやすくなった頭に手を置くと、ゆっくりと彼女が目を開いた。
「…ん?」
「おはようなまえ」
「あ…、ルシウス先輩…私…そうだ耳…」
ゆっくりと起き上がりながら耳に触れるなまえは意外にも冷静だった。そこになにもない事を何度か触って確かめると、泣きそうな目で私を見てくる。堪えきれなくて抱き締めると、う、と嗚咽が聞こえてきた。
「そんなに嬉しかったのか?」
「う…だって…耳がなくても起きたらルシウス先輩がいたから……!」
「よく思い返してみろ、昔からなまえは特別だ」
「言われてみればそうかもです…意地悪をたくさんされたから良い思い出かかすんでたけど…」
「お前の反応が可愛いから仕方ないだろう」
「可愛いとか…絶対思ってないですよね」
「もう良い、私が順番を間違えた」
泣いている彼女の目尻を人差し指で拭いながら笑う。猫耳には感謝した方が良いかもしれない、今まで私しか知らなかった隠れた女の子を皆が発見してしまった代わりに、自分の嫉妬心と気持ちに正直になれたのだから。
「なまえ、お前が好きだ」
「私も、ルシウス先輩大好きです…」
私が猫耳生やして良かったなんて現金な事を思っているのは絶対に秘密、ルシウス先輩にはばれてそうだけど!
(end
2013/10/1)
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