ま、まちがえた!!(平彩)
色々あって、拙者は星彩と出かけることになったのだが、その、最近は二人きりになることが無かったので、今までに無いくらい緊張している。
本当、手と足が一緒に出てしまうくらい緊張していた。
拙者が星彩とはぐれてしまったのは、もしかしたらそのせいもあるのかもしれない。
「星彩ー!」
さっきからずっと探しているのだが一向に見つかる気配は無く、自分から誘っておいてこんなことになるなんて、と泣きたくなるが流石にそれは恥ずかしいので堪える。
とにかく、一刻も早く星彩を探さなければと拙者は足を速めた。
「おい、」
と、その時急に後ろから声を掛けられた。拙者が振り向くと、そこには見るからに柄の悪そうな男が数人立っている。
星彩を探さなければいけないのに、と急ぎたい気持ちを抑え、恐らく大した用では無いとは思うが拙者は口を開いた。
「何か用でも…」
「いや、随分良い身形だなと思ってな」
拙者の言葉を遮って男は言った。
その言葉の意味が分からないほど無知では無い。きっと、物取か、盗人といったところだろう。
先を急ぎたい拙者は男達を相手にするのを止め、無視を決め込むと彼等に背を向けて歩き出した。
「テメェ!無視すんなよ!」
それが気に障ったらしく、拙者と話していた男がそう言ったのを皮切りに、他の奴等も刀を抜いて拙者に向けた。
男はそう言ったのと同時に拙者に斬りかかって、避けようとしたが、あまりにいきなりだった為に完全には避けられない。
かすってしまう、そう思い来るべき痛みに身構えたのだが、そうなる前に男はいきなり拙者の視界から消えた。
「あ、え…」
状況が理解出来ない拙者に声をかけたのは、さっきまで探していた星彩だった。
「怪我は無い?関平」
「星彩!」
さっきの男が消えたのは星彩が投げ飛ばしたかららしい。
そう言った星彩はまた拙者に背を向けて残りの男達に向き合った。
それからは本当に一瞬で、まさに千切っては投げ、という言葉がぴったりなほど星彩の戦いっぷりは素晴らしいものだった。
拙者はそれに見とれつつ、自分の不甲斐なさに悔しくなる。そんな拙者を知ってか知らずか星彩は拙者に手を差し伸べた。
「関平、終わったわ。行きましょう」
「…………」
無言で立ち上がる拙者に、星彩は更に続けた。
「もしかして、怒った?」
「そんな、こと…。そうじゃなくて、拙者…」
上手く言えない拙者は星彩に呆れられるのでは無いか、と思い星彩の顔を直視出来ないでいた。
暫く沈黙が続いたが、それを破ったのは意外にも星彩。
星彩がいきなり拙者の手を掴むので、慌てて顔を上げると、その近さに更に慌てた。
「せ、星彩…」
「別に呆れたりなんてしてない。関平だけでも倒せたと思うし、私が勝手にやっただけだから」
まるで拙者の心を読んだようでそれに驚きながらも、やっぱり何も言葉が返せない拙者に星彩はまた言った。
「それに、そんな関平も嫌いじゃない」
「そ、それは、星彩、その…!」
期待しても良いのだろうかと顔を上げた拙者に今まで無表情だった星彩は薄く笑う。
それに顔が赤くなるが、拙者は緊張で震える唇を動かし言葉を紡いだ。
「せっ、拙者も、星彩が…、その、だから、拙者の、拙者の彼氏になってください!」
重大な間違いに気付いたのは、珍しく声をあげて笑った星彩をみてからだった。
ま、まちがえた!!
ノ
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